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これまでいくつかのWebビジネスに関わってきて、多くの人が陥りやすい“よくある勘違い”のパターンのようなものに気が付きました。忘れないようにメモしておこうと思います。
今日は、その1。
Webサイトにコンテンツ(記事)を作る作業は、書籍や雑誌の読み物を作る作業と共通の部分が多いため、どこのWebサイトでも書籍や雑誌のビジネスの経験がある人に担当していただくことがよくあります。そういう方が起こしやすい勘違いに「ページビューを増やすには、いいコンテンツを作ればいい。いいコンテンツには読者がたくさんやってきてページビューが生まれる」というものがあります。以前書いた
フィールドオブドリームズ症候群が重篤になったものです。
誤解を恐れずに、言い切ります。コンテンツが良くても悪くても、ページビューは変わりません。
雑誌のビジネス、特に定期購読だけでなく店頭売りに依存しているビジネスの場合、たしかにコンテンツ(記事)の良し悪しが売り上げを直接左右するはずです。店頭で立ち読みしてみて、良い記事があれば買うし、なければ買わない。これになれた書籍や雑誌の編集者さんは、Webでも同様に「コンテンツの良し悪しがページビューに直結する」と勘違いしてしまうようです。実際には、Webの読者は悪いコンテンツでもとりあえず一度は見てくれますし、どんなにいいコンテンツでもそこに何とかして誘導しないと見てはくれません。
その振る舞いは雑誌の購読者というよりも、むしろテレビの視聴者に近いものと考えたほうがいい。番宣や他の媒体(新聞のラ・テ欄とかテレビ雑誌ね)で見て、おもしろそうと思ったら見る、つまらなかったら次から見ない。あるいは、週刊誌や夕刊紙の読者の性行も似ています。中吊りの表現やキオスクにタケノコ巻きになっている新聞からちらりと見える刺激的な見出しが直接の売り上げを左右して、コンテンツの良し悪しの判断は買った後に行なわれます。だから週刊誌は中吊りのレイアウトに工夫を凝らし、東スポはキオスクで目立つ一面右肩の大見出しに精力を傾けるのです。
Webの無料コンテンツビジネスでは、
- コンテンツの良し悪しは、目先のページビューの生成には関係がない
- ページビューの多寡は、もっぱら他の場所(ページビューのある場所)からの誘導によって決定的に左右される
- 読者側のコンテンツの良し悪しの判断はページビューが発生したあとに行われる
- コンテンツの良し悪しは次回の訪問(ページビュー)には影響があるが、それもすぐに忘れられる
ということを強く意識しなくてはなりません。
会計的に見ると、コンテンツは固定資産で、この固定資産が生んでくれるインプレッションやトラフィックが流動資産です。財務会計上はコンテンツの制作費は費用扱いでしょうけど、管理会計上は資産的意味合いが非常に強いと考えます。コンテンツも作った状態ではただのストックで、個々の読者が必要と思ったときに読んでくれ、その瞬間に初めて“インプレッション”や“トラフィック”という対価を生み出します。
もちろん、いいコンテンツは重要です。ダメなコンテンツだと長期的には再訪率を下げてしまいますし、「次も読もう」と思ってもらえれば継続的な固定読者になってくれるかもしれません。立派なコンテンツを作ることは、よい固定資産を蓄積することです。今すぐページビューが必要だというときにコンテンツを作りを始めるというのは、紙を大量生産したいときに植林を始めるようなものなのです。
というわけで、目先のページビューが欲しいとき最初に考えるべきことは、コンテンツの強化ではなく、外からのトラフィック誘導やサイト内ナビゲーションの強化によって既存コンテンツからページビューを生み出すことです。もし既存のまともなコンテンツがなければ、潔くあきらめるか、千載一遇のチャンスを狙って一発逆転誰でも今すぐ見てくれる大ヒットコンテンツ(たとえば
こんなの)が生まれることを祈りましょう。
HIROYUKI TAKAHASHIさんのコメント:
ウェブに関ってきた人間として、
記事に深く共感を覚え、TBさせて頂きました。
事後報告になりますが、ご挨拶までに。