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The means justifies the ends

瞬発力と持続力 [コンテンツのストック性]

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陸上選手に短距離ランナーと長距離ランナーがいるように、オンラインメディア事業でのコンテンツにはフロー系(あるいは非ストック系)のコンテンツとストック系のコンテンツがあります。先日書いた「コンテンツをストック(固定資産)、トラフィックをフロー(流動資産)とみなす 」という話とは、用語が似ているけれどまったく別の話なので混同しないでくださいませ。

フロー系のコンテンツとは、ニュースに代表される、発信された後の時間が経過するとみるみる価値が下がっていくもの。一方のストック系のコンテンツとは技術解説や辞書などのリファレンスに代表される、発信された後の時間の経過とは関係なく価値が長期間持続するもの。それぞれの特徴を簡単にまとめるとこんな感じ(これだけではないけれど)。

フロー系ストック系
価値がすぐ減る価値がなかなか減らない
一気にトラフィックを集める魅力がある長期間にわたってじわじわとトラフィックが来る
Push配信向き
(ニューススタンド、宅配……)
必要なときにPullしてもらえばいい
(図書館)
継続的に絶え間なくコンテンツを発信し続けることが必要大量・広範囲・網羅的であることが必要
ロングテールのアタマ側ロングテールのしっぽ(裾野)側

@ITをいっしょに作ってきた新野さんが昨年ブログの『オンラインメディアでも破壊的イノベーションが始まったのだ、恐らく 』という記事に書いていたけれど、@ITなんかはストック系コンテンツを中心に組み立てたメディアの代表例だと思いますし、同じ社内でもITmediaの各媒体はフロー系。それから、ブログメディアと総称されるTechCrunchやGizmodoとかネタフル*1といった新興のフットワークの軽いメディアもフロー系です。
フロー系コンテンツについては、ネットワークコスト低下の恩恵を受けたブログメディアなどが続々と出てきていて頼もしい限りなんですが、本格的なストック系コンテンツを体系的に組み立てたメディアはなかなか新興勢力が出てこないのは先日の「オンラインメディアと資産 」の記事で書いたとおり。

フロー系コンテンツのメディアはネット時代以前にも新聞とか雑誌という形でビジネスの形がある程度確立していました。一方、ストック系コンテンツはネット以前だったら在庫コストの制約のためにコンテンツ本来の寿命が来る前に絶版になってしまっていたのが、ネットのおかげで読者側が必要なタイミングまで保持しておくことがようやく可能になって、コンテンツ本来の価値を最大限発揮できるようになった「革新的」でまだまだ未開拓な分野だと思うわけです。
単純に、フロー系のコンテンツとストック系のコンテンツを上手に組み合わせて、フロー系コンテンツで流入トラフィックを誘引して、そのトラフィックをストック系コンテンツに誘導して滞留していただけるように設計するだけでもトラフィックの二毛作、一粒で二度おいしい黄金のコンビネーションなんですけどね。

出よ、若者(くどい)。

[2009/3/3 追記] *1: ネタフルのコグレさんから「実はぼくはブログを書きはじめた当初からフローとストックの両方を意識して書いていました。」というご指摘をいただきました。たしかに。この並びの中では、ネタフルはちょっと違っているかも、と納得。ネタフル=フロー+ストックの二毛作系ブログメディアの先駆者ですね。

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