ソフトウェアはネット事業の構成要素の一つに過ぎないのです [ネットは残酷だ]
樋口 理 2009/5/3 16:17
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直接話す機会がある人にはけっこう口を酸っぱくして言っていることなんだけど、思うところあって。
ネットでビジネスを立ち上げることは、他の事業領域の立ち上げに比べて一般に小さい資本でやれることが多いせいか、他の事業で成功体験をお持ちの人からは何かちゃちゃっと小手先でやっつけられることのように錯覚されることが多いんじゃないかという気がしています。
製造業とかリアルの小売業の立派な会社の経営者さんが「売り上げがちょっと足りないから、うちもネットでショップを立ち上げて売り上げ増に貢献させよう」なんて思いつきのように言い出して、結局何も起こらないかひどいことになっちゃったというケースとか、紙の出版業のみなさんがネットの「出版」事業に参入してまったく鳴かず飛ばず、なんて言うケースはいくらでも思い当たりますし、もっと身近でよく見かけるのは、ソフトウェアビジネスの世界で立派な経験を積んだ人がネットの事業に進出して、結局うまくいかないという例。
ネットの事業もサーバーの上のソフトウェアでできてるんだからと、ソフトウェア屋さんにとってはお茶の子さいさいに見えちゃったりするのも分からなくはないけど、それは勘違いだと思います。
ソフトウェアはネットの事業を成立させるのに大事な部品の一つにはちがいないけれど、あいにくネットの事業はそれだけでできてるんじゃない。ネットの上で事業を成立させるためにむしろ大事なのは、ソフトウェアやコンテンツを使って、事業に必要な適切なアテンションを集め続けるしくみを作ることだと思います。それはソフトウェアやコンテンツを利用してもらうサービスを作るというよりも、ソフトウェアやコンテンツを使ってある種のコミュニティを作り上げていく作業に近くて、誤解を恐れずに乱暴に言えば、広い意味での「メディア」を作ることだと思うのです。
立派な小説や訓練された記者さんの新聞記事は(たぶん)よい文章だけど、小説や新聞記事をそのまま無線とじの薄い紙に印刷して並べてもそれが「雑誌」というメディアに昇華して読者が付くことがないように、よいソフトウェアをサーバーに置いて公開しただけじゃ、たぶんメディアにはならないし、翅が生えて事業になることもありません。
また、ネットのことを、コンテンツやソフトウェアサービスを簡単に配信できる単なる新しい流通経路ととらえるのもたぶん間違い。ネットの上ではアテンションがなければコンテンツもソフトウェアサービスも1ビットたりとも流通してくれないのですから。
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