The means justifies the ends
飛行機の中でのパソコンや携帯電話などの電子機器の使用がほぼ自由化される運びになりましたが、今日はその先のお話。
先日、成田からグアムへ行くのにユナイテッド航空を利用したんですが、利用機材はボーイング777-200なのに座席にモニター画面がありませんでした。
そのかわり、機内のWi-Fiに自分の iPhone/iPad や PC を接続すると映画や音楽が楽しめるというシステムのベータテストをやっているとのアナウンス。
事前に App Store で「United アプリ」をダウンロードしておけと言っているので、ドアが閉まる前に慌ててダウンロードしておきました。PC のブラウザで見るときは、プラグインをインストールしておく必要があるようです。
旅客機の中で映画などを鑑賞する IFE(In-Flight Entertainment=インフライト・エンターテインメント)システムは、ざっとこんな感じに進化してきました。
年代 | 音楽 | 映像 | 画面 |
---|---|---|---|
〜1990年ぐらい | チューブ式イヤホン | フィルムやビデオテープ1番組の放送 | プロジェクターやブラウン管をみんなで見る |
1990年ごろ | 電気式のイヤホン | ビデオテープ複数番組の同時放送(アナログ) | 各自の座席に画面 |
2000年ごろ | ↓ | サーバーからデジタルで送出するオンデマンド再生 | ↓ |
いまここ | ↓ | ↓ | 各自のスマホやタブレットをBYOD |
1980年代後半、ソニーに勤めていた私は米トランスコムのジョイントで、ボーイングの次世代旅客機向けの IFEシステムのプロトタイプを開発するプロジェクトの隅っこに関わっていたのですが、そのターゲットだった次世代旅客機が今のB777。
当時の IFE は、音楽こそ座席でチャンネルが選べるマルチチャンネルでしたが、映像は飛行機のキャビンにテープデッキを積んで、そこで再生する番組を機内のプロジェクターで大きなスクリーンに映すものでした。
で、ソニーとトランスコムが開発していたのは、映像もマルチチャンネルにして、一人一人の座席に小さな画面でチャンネルを選べるという、当時としては画期的なものでした。
送出側には8ミリビデオのデッキをチャンネル分並べて同時に再生したものをアナログで変調した電波に乗せて同軸ケーブルを伝って全座席に届けるしかけ。
余った帯域で32kbpsのデジタル通信ができるようにして、音楽はデジタルで「放送」し、各座席の画面のウラに仕込んだMSXにサーバーからゲームをダウンロードして遊んだり、機内食のオーダーを入力したりできる、というものだったと記憶しています。
それから四半世紀経って、今の主流は、送出側がテープデッキではなくハードディスク上のデジタルデータになり、それを同時放送ではなくデジタル伝送のオンデマンドで、手許の画面で好きなときに好きな番組を再生できるようになっているわけですが、このベータテストは、手許の画面とイヤホンを各自の持ち込みデバイスで置き換えるというものです。
航空会社にしてみると、座席の機材が減って設置やメンテナンスのコストが下げられるし、機体の重量がぐっと減らせて燃料も節約できるので、とっても好都合なんだと思います。
閑話休題。
実際にサービスを使ってみた様子をご覧ください。
まず、機内誌に書いてあったサービスの説明。Beta Test って書いてありますね。
飛行機が巡航高度に達して、おなじみの「これからは電波を発しない電子機器をご使用になれます」のアナウンスを待って、機内モードにした iPhone の Wi-Fi を On にする(こうすると「電波を発する」んですけどね)と、United Wi-Fi という SSID の電波が機内に飛んでいました。
これに接続して、ブラウザを開くと、unitedwifi.com というページに飛ばされます。
Enjoy complimentary* movies and shows, sponsored by the MileagePlus Explorer Card.
(マイレージプラス・エクスプローラー・カードのスポンサーによる、無料*の映画とショーをお楽しみください。)
という表記の complimentary(無料)の部分に星印が付いているのに注目。下に小さく
*On select aircraft for a limited time only
「一部の機体で、限られた期間のみ」無料で提供する、と。そのうち、エコノミーキャビンではサービスを有料化して収益源にしたりするんでしょうね。
映画は古いものから最新のものまで、幅広くラインナップされています。
古い白黒映画を見ることにしました。
画質は十分きれいです。
iPhone でスクリーンショットを撮ったものを2分の1に縮小した画面がこれ。
普通にオンデマンド再生なので、一時停止や早送りや巻き戻し、他の番組への切り替えも自由にできます。
映画を見ている途中でアナウンスなどが入ると、再生が自動的に一時停止して、iPhone のイヤホンから PA が聞こえてくるし、アナウンスが終わるとまた自動的に再生がはじまります。
ただし、今のところ、字幕や吹き替えはなし。これは日本便に本格展開する前に何とかしないと無理かなあ。
というわけで、早晩、 飛行機の長旅には BYOD が普通になるかも、というお話でした。
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