The means justifies the ends
京都で「番茶」をいただくと、他の地方とはかなり違ったものが出てきます。
中国茶のラプサンスーチョンに似た、人によっては正露丸にも喩える、独特の煙たい香りのお茶。
お茶の葉を見せてもらうと、見慣れた緑色の撚りのかかった葉っぱじゃなくて、まるで枯れ葉と枯れ枝を掃き集めてたき火をしたあとに残った半焦げの燃えさしをかき集めてきたみたいな姿と香り。
これが、おそろしくうまくて、くせになるのです。
番茶というぐらいですから、とってもお安いそうで、京都ではこれが普段使いのお茶なんだそうで、ヤカンで大量に煮出して、温かいのをそのまま飲む。そして冷蔵庫で冷やして飲む。ゴクゴク飲む。
ところが、この京番茶、京都以外ではあまり売っていなくて、なーんかくやしいのですが、実は東京でいつでも京番茶を売っているお店が少しだけあります。
それは、一保堂茶舗。デパートの地下とかで、高いお茶を売っている京都の高級なお茶屋さん。
店頭のショーケースには展示してませんよ。ショーケースの中は、高〜い抹茶や玉露とか、贈答用のセットだけ。
でも、カウンターの中の店員さんに、ヒミツの合い言葉のように小声で「お番茶、ありますか?」と尋ねてみてください。
店員さんが、こちらを試すように「番茶は、普通の番茶じゃありませんが……」と返してくると思うので、みなまで言わせず「はい、京番茶を」と答えてください。
すると、得心したように「150グラムですか?400グラムですか?」と聞いてくるはずなので、お好みの量を答えると、カウンターの裏の方に行って厳重に包んだビニール袋の中から、ふくらんだ茶色の紙包みを出して来ます。これが、例のブツ。
気の利いた店員さんだと、さらに紙包みをポリ袋にツッコミながら「袋、二重にしますか?」とたたみかけてくると思います。ニオイがきついので、そのまま電車に乗ったりすると異臭騒ぎを起こすかも知れない危険なブツなのです。
そこは、クールに「いや、そのままで結構」とキメて、無造作にブツの包みを自分の鞄の中かコートの懐に隠して、逃げるようにその場を立ち去るべし。
あ、一保堂の店舗の中でも、一保堂の社員さんが常駐しているところじゃないと、このテクは通用しないかもしれません。例えば、大井町阪急とか、小さな棚にファンシーなお茶が数種類置いてあるだけなのです。使えん。
おためしください。