The means justifies the ends
先日、ダイソン創業者のサー・ジェームズ・ダイソンに会いに行ったイベントは「ダイソン社が業務用ハンドドライヤーでB2B市場に参入」という記者発表会だったのだけど、あの製品、一般家庭向けでもけっこう売れるかもな、と思ったというお話。
まず、このビデオを見てください。件のハンドドライヤー Dyson Airblade で手を洗って乾かしているところ。
公共施設のトイレなんかによくある国産ハンドドライヤーと比べて決定的に違うな、と思ったところは3点。
エアブレードって本当にいいネーミングだと思うのだけど、ダイソンのお家芸である強力なモーターで局所的に強烈な空気の流れを作る技術で、手のひらに付いた水をスパッと掻き落としてくれます。
普通のハンドドライヤーだと何度も手を入れたり出したりしてもなかなか水気が取れず、結局ズボンで手を拭いちゃうのだけど、こいつは手の甲と手のひら、それぞれ6秒ずつぐらいかけて、ゆっくり2回通すだけで(そりゃ、完全に乾ききるとは言わないけれど)後は自然乾燥に任せてOKというぐらいまで水が落ちます。これは本当にすごい。
ダイソン氏は、しきりに「エンジニアの仕事は、ユーザーのフラストレーションを解消するモノを作ることだ」という意味のことを言っていますが、ハンドドライヤーのくせに手が乾かないというフラストレーションを突き詰めて技術で解消しようとしているんですね。
蛇口とハンドドライヤーをくっつけただけじゃん、と揶揄する声もあるようだけど、この合体は五徳ナイフみたいなとってつけたアイデアじゃなくて、けっこう本質的な価値変化。
普通のハンドドライヤーって、実は切った水がキャビネットの下に溜まってるんですよ。その中の衛生状態がどんな感じかと思うと、ね。しかも、乾かす風が弱いのをカバーするために生ぬるい温風を出してたりしたら、溜まった水は雑菌の繁殖好適地。
ところが、このデザインだと、手から落ちた水はそのまま手洗い鉢から排水に流れていくから、メンテなしで清潔に保てる。
あと、蛇口からハンドドライヤーまでの間に水がポタポタしたたることもない。
ちなみに、手を乾かすのはHEPAフィルターを通ったあとのキレイな空気なので、トイレの室内の空気よりも清潔。
家を建てる検討とかしたことある人は分かると思うけど、トイレの水回りの住設機器ってなんだかダサい造形が多くて。ところが、これは蛇口としてもハンドドライヤーとしても存在感があって、しかも使い方が自然にわかるデザイン。SUS304ステンレス鋼にレーザー処理のシャープな外観もすてき。手洗い鉢と蛇口が設置できるスペースなら無理なく収まるサイズなのもえらいです。
このハンドドライヤーのお値段はだいたい20万円ぐらいとのこと。蛇口に20万円は高いと思うかもしれないけれど、トイレ周りの手洗いキャビネットって平気で20万円とか30万円なんていう上代がついているので、集成材かなにかの平台カウンターに、手洗い鉢とエアーブレードの組み合わせだったら、そんなに変わらないコストで見た目も機能も圧倒的によいものができると思うのです。
残念ながら、我が家の手洗いカウンターはちょっと幅というか奥行きが足りなくて置けそうにないけれど、設計するときにこれがあったら施主支給してでも導入してたなあ……。