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The means justifies the ends

小さく産む時代 [オンラインメディアと資産]

以前、ソフトバンクパブリッシング(当時)の岡崎さんと新橋の焼鳥屋さんに向かって歩いていたとき、「ネット事業のための資金を調達するために株式市場は本当にふさわしいのかな」と独り言のような質問を投げかけられました。以来、その質問が頭の隅っこに引っかかったままなのです。

20世紀の終わり、インフォシークや@ITを立ち上げたころは、サービスに必要な冷蔵庫みたいなサーバーやエンタープライズ向けのデータベースソフトなどの『生産設備』を買い揃えるだけでも数千万円が吹っ飛んで行ったもので、そのためにベンチャーキャピタルからの投資を仰ぐことがどうしても必要でした。オンラインメディアは、たとえはおかしいかもしれませんが産業資本的だったように思いますし、そのための資金を株式市場から調達するのも、まあ「あり」でした。

その頃に比べると、サーバーなどのハードウェアもCMSなどのソフトウェアもそれからネットワーク資源も、2桁ぐらい安くなりました。オンラインメディアを立ち上げるのに初期投資はほとんどいらなくなり、(ベンチャーキャピタルがみんなそうだというわけではないけれど)産業資本主義時代の仕組みを引きずっている旧式のベンチャーキャピタルが投資したくても“粒が小さすぎ”て投資できないほどです。

じゃあその結果、オンラインメディア事業を立ち上げようという人たちがぞろぞろ現れたかというと、そうでもない。どうしてかというと、本質的な生産財が欠けているから、つまり、先日書いたようなコンテンツのストックを生み出し、そこにトラフィック=アテンションを持続的に集め、集まったアテンションの価値を貨幣に転換するという、メディア組み立ての一連の作業のノウハウとセンスを持った才能が圧倒的に不足しているからじゃなかろうか。

そんなわけで、せっせと小さなベンチャー企業のインキュベーションに勤しみ努めているような次第。出よ、若者(と、Young-at-heart)。

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