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The means justifies the ends

(CPM−内部雑音定数)×感度定数=時間あたり線量 [自作ガイガーカウンターの感度と精度]

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ときどき、自作のガイガーカウンターの感度や精度についてお問い合わせをいただくようになったので、専門家でもなんでもないんですが、素人なりにちょっと解説を。

間違いなどありましたら、突っ込み、訂正、補足など歓迎です。

感度のこと

ガイガーカウンターの感度は中のGM管の構造と電気特性で決まるので、自作だから感度がいいとか悪いとかいうことはありません。
乱暴に言うと、大きいGM管ほど感度はいい。中を通過した放射線の数を一つずつ数えるしくみなので、大きい管ほど中を通過する確率が高くなるから。
時間あたりのカウント数に感度の定数を掛けたものが時間あたりの線量。

ただし、GM管の中を通過する放射線量がとても多くなって、放電の間隔が短くなると、感度が飽和します。
一度放電を起こしたGM管は、その放電の「余韻」が消えるまでの間放電を起こさないという、原理的な限界。
あと、特にカリカリいう音をiPhoneとかで数えている場合、クリック音の間隔が近すぎて別々のクリック音だと認識できない(認識するようにしちゃうと、ちょっとした波形の暴れでもダブルカウントしちゃう)可能性あり。もっとも、これは、回路をしっかり設計して、波形の暴れを減らすことと出力を微分することで回避可能。

リニアリティのこと

放射線量とカウントの数は確率的に比例します。
これも、自作だから精度(リニアリティ)が悪いということはないはず。

内部雑音のこと

GM管には Inherent Background Count というのがあって、外からの放射線が無くても、勝手に時々カウントしてしまうものらしい。GM管の材料の中に放射性の物が少し混ざっているとか、自然に放電を起こすとか、そういったものだと思います。
それから、カウンターを組み立てた部品とか、外についたほこりやゴミに放射性のものが混ざっていると、そこからの放射線をときどき数えてしまいます。
これが、内部雑音。

内部雑音と外からの放射線によるカウントは単純に足し算されてカウントされるので(厳密には、前述のように、2つの放射線がものすごく近いタイミングで飛び込んできたらカウントできないけれど、それは確率的に均等に起こるとして)実際にカウントした数から内部雑音の分のカウントを引けば空間の線量がわかります。

放射線が入ってこない環境に置いて、平均毎分何回ぐらいカリカリ言うかを数えると、そのカウンターの内部雑音がどのぐらいかわかるはず。

実際どうなのよ

もし機会があれば、基準になる線源と比較用の較正ずみカウンターを用意して、自分のカウンターのクセを調べて知っておくといいと思います。

先日のガイガーカウンターミーティングでも「鳴き合わせ」をやっていたようです。残念ながら自作のカウンターは遅い時間でないとダメということだったので都合が合わずに行けませんでしたが、今回のSBM-20を使ったキットで鳴き合わせをしてきた友人によると「Geiger Botのデフォ値のままμSv値から0.1引けばほぼ合う感じ」だそうです。Geiger Bot のデフォルト値は、SBM-20に合わせてあって、132 cpm が 1μSv/hr 相当の感度定数。
そして、内部雑音が0.1μSv/hr相当ぐらい、つまり13cpmぐらいは放射線が来て無くても勝手にカリカリ鳴っている分、ということ。

よく「素人が校正してないガイガーカウンター持って騒ぐのは意味ないからやめろ」という主張を聞くことがあります。たしかに、間違った測り方をして、出てきた数値だけを絶対値かなにかのように騒ぐのは迷惑だとは思う。
でも、こういう仕組みをちゃんと理解して、相対的な比較をしたり、時間毎の変化を見たりするのは、有意義なことだと私は思います。

コメント

ryouさんのコメント:

いつもながら、説得力のある内容で興味深く読ませていただきました。
私も今回の内容と同じような事を頭の中で想像していたのですが言葉で説明できるハズもなくモヤモヤしていたのですが、明解でした。

私は福島県在住なのですが、仕事柄、浜通り(太平洋側)には以前から頻繁に足を運んでおりまして、今回の震災後も幾度となく悲惨な現状を目にしています。

本日も浜通りへ向かいましたが、C6981完成後は始めて計画的避難地域に入りました。
車中、C6981&Geiger Botで計測しながら通過しましたが、やはり報道のとおり高い数値を示していました。

そんな中、Geiger Botの計算方法に少々疑問が。

Geiger Botは過去何秒間かのカウントの間隔を計測(計算)してマイクロシーベルトなりに変換しているようですが、急激な上昇には追従しても、急激な下降面では対応しきれないということです。急激な下降面ではリセットしないと正しい数値が得られないようです。

私は全くのド素人ですし、一般的なガイガーカウンターがどうなのか?はわかりません。Geiger Botにそこまでの精度を求めること自体がナンセンスなのかもしれません…ただのツブヤキと思ってください。

それにしても、こんな機械が役立つ世の中なんて、本当に嫌ですね…。


こんなものが役に立つ世の中になってしまったなんて、悲しいですね。
2011/6/14 23:01

Nick Dolezalさんのコメント:

ryou:

I would suggest tapping the "15 s" button -- this will make the measurement behave as you expect.

Explanation:

By default, Gaigabotto is set-up to perform an "integration count" or "integrating count" as it is called in English. This is an average for the entire time the program has been running.

CPM x = total_count / (elapsed_seconds / 60)

Calculating the dose in uSv/h is performed as follows:

uSv/h x = (CPM / 60) / conversion_factor * 10.

All digital Geiger counters perform an integration count over some period of time. (analog meters do it indirectly with meter fall times and voltages)

To limit the time to the last 5 or 15 seconds, tap "5" or "15" by the "Integration" button under "modes".

(NOTE: 5 seconds will reduce the confidence interval to less than 95%. I do not believe this is adequate precision for radiation levels currently in Fukushima prefecture outside of the NPP itself.)

Alternatively, you can do this manually by "zeroing the meter" to use the English phrase. Tap the "O" (null set) button-- labelled "RESET" in Japanese I believe.

This is all fairly confusing, because "integration count" or "integrating count" is a fairly archaic English phrase. I do not believe it translates well. (it is unrelated to the anti-derivative in calculus)

Perhaps I should have labeled the "modes" section as "measurement time" with options for "infinite, 5s, 15s".

Osamu:

Interesting post. I will add an inherent background noise correction option to Geiger Bot and default it to the SBM-20/U tube values.
2011/6/15 08:38

樋口 理さんのコメント:

Nick,

Thank you for your clarification. I was just going to write a comment explaining integration mode and interval modes and found your comment. What a quick move! :-)
Also, I think it would be great to have background noise correction option. Though the spec sheet of SBM-20 Tube says that the inherent count is 1cps, it actually seems to be about 12-13 cpm.

ryou さん
上記のNick Dolezalさん(Geiger Botの作者)からのコメントの通り、ガイガーボットはデフォルトで「積分モード」に設定されています。計り始めてから今までの累積のカウント数を元に線量を計算する方式ですので、一度線量が上がると、その後線量が低くなっても数値がすぐには下がりません。
線量の変化が早い状態などで、その瞬間の線量を測りたいときは5s(5秒ごとのカウント数でリセット)か15s(15秒ごとにリセット)のモードで測ると短い周期で上下するようになります。ただし、その場合確率的に精度が下がるのでお気をつけください。
積分モードで、ときどき手動でリセットボタンをタップするという手もあります。
2011/6/15 08:52

樋口 理さんのコメント:

Nick,

> Perhaps I should have labeled the "modes" section as "measurement time" with options for "infinite, 5s, 15s".

Then I'd suggest Japanese translation for these like "計測間隔" and "累積, 5秒, 15秒".
2011/6/15 13:46

ryouさんのコメント:

Nick:
Thank you for the depth explanation.
I wishes the thing that becomes a good thing further more.
樋口さま:
お二人共に私のような素人の戯言に、本当に迅速な対応をいただき、ありがとうございます。
以前より、Geiger Botの各機能(操作方法)が良くわからず、ネットで探していたのですが…今回、作成に関わるお二人からレクチャーいただき理解することができました。

他にも私のように悩む方もいらっしゃるかと思いますので、ヘルプ機能で各機能の説明・補足などがあるとより使い易くなると思うのですが…。
2011/6/15 22:54

Nick Dolezalさんのコメント:

Osamu:
I agree, 1 CPS does seem high. 12 CPM seems a reasonable default given that most people have SBM-20 tubes.

On a sidenote, I'm now getting about 100+ CPS background with my Kvarts unit. After the last battery change it hasn't been the same. At higher levels from a check source it's fine, but at background levels it often clicks several times for a single count. I tried adding some insulation from the tube in case it was a high-voltage discharge but it didn't help. I also cleaned out the case and took it outside in the event it was attracting radon decay products through electrostatic attraction or something. Perhaps the halogen quench has started to break down... anyway, I guess high-voltage analog electronics can be twitchy sometimes.

And thanks for that translation. This should help clarify things further I think. (the Pachube parameters will probably be very confusing though... is Pachube's website localized?)

ryou:

I hope it works better for you now. Also, your employer should buy you a nice calibrated professional dosimeter. Ask for a Polimaster PM1703M. ^_^
2011/6/16 01:01

樋口 理さんのコメント:

Nick,

Pachube is not localized. I agree that Pachube parameters translation should be a pain in the neck. I'll take a look. Let me sleep on that.
2011/6/16 01:17

aBeBeさんのコメント:

私もSBM-20を持って611GCM行ってきました。鳴き合わせではやはり0.1μSv/h程度高く出ました。鉛の部屋では測定する機会を得ませんでしたが、家に帰ってからジップロックに入れて30cm風呂の水に沈めて遮蔽(?)してみたところ、15,9,15,11,14,15CPMで0.1μSv/hまでは下がることが確認できました。
2011/6/21 09:02

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