The means justifies the ends
今度のダイソンの羽なし扇風機は、前のモデルの弱点だったうるさい運転音が本当に静かになっていて、しかも音のボリュームが小さくなっている上に音の質が大きく改善されていることを実験で確認しましたよ、というお話。
先日ご紹介しましたが、エアフローの無駄なエネルギー消費を抑え、ヘルムホルツ共鳴器でモーター音を吸音することで、同社の前機種より75%静かになったというふれ込みの、ダイソンの新しい羽なし扇風機 AM06。
ダイソンの中の人に「どんな具合に静かになったのか実験で比べて見せたらいいですねー」なんて言っていたら、以前のモデルの AM01 と2台セットで送ってくださいました。
はいはい。おまえが実験しろ、ということですね。
音の測定なのでまわりの生活音とかの影響を受けない場所、ヒグチ・コム地下秘密基地に併設の、遮音した部屋に扇風機と測定セットを持ち込んで実験してみました。
まずは、実験概要のビデオをご覧ください。
実験対象は、扇風機3台。
実験セットは下の写真のようにセットアップしました。
扇風機から一定の距離で風がいちばん強く当たる場所に、プラバンとストローと竹串で作った風力計を置いて、同じ強さの風になるように扇風機の強度を調整します。
AM06を最強にした時にこの風力計の目盛りがちょうど6ぐらいになったので、その強さの風を「強」として、その半分の3の目盛りになる強さの風を「弱」と、それぞれの強さの時を調べることにします。
(「弱」と呼んでいますが、どの機種も、だいたい真ん中ぐらいの強さです)
扇風機から50cmぐらいの一定の距離に、40dB(A)から120dB(A)まで測定できる騒音計をセットして、それぞれの扇風機から出る騒音を測定します。
扇風機を取り替えて測定するので、扇風機のセンターの位置がずれないようにテープで「バミって」おきます。
部屋の防音ドアをロックした状態で扇風機を動かしていない時の外部からの騒音レベルは、この器械の測定限界の40dB以下です。
まず、普通のDCモーター扇風機から。
次に、AM01。
最後に、新機種 AM06。
グラフにすると、こうなる。
(※注:冒頭のビデオを撮影した後でセッティングを変えて測定したので、ビデオの中の数値よりは1dBほど小さめの数値が出ています)
AM06は、風量の強弱にかかわらず、従来型の静音扇風機とほぼ同じレベルのノイズしか出ていません。
旧機種のAM01に比べると7〜8dB程度静かです。ダイソンの公称数値では、音のパワーの比較で「75%静かになった」と謳っていますが、パワーが4分の1ということは約6dBの差ということなので、公称値よりも静かになっていると言えます。
騒音の大きさがぐっと抑えられたことは数値でも分かったのですが、聴感上はもっと劇的に変わって聞こえます。それを確認するために、騒音の周波数スペクトラムを見てみます。
まず iPhone をスペクトラムアナライザにするアプリ「bs-spectrum」でさくっと比べてみたところ、吸音用ヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数である1KHzあたりが落ち込んでいそうなことがわかりましたので、騒音計のAC出力をPCのオーディオインターフェースに入れて、Windows版のスペアナソフト「WaveSpectra」で20サンプル平均値のチャートを比較。いずれも風の強さは「強」です。
WaveSpectra -- http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/soft/ws/ws.html
これがAM01(青むらさき)とAM06(赤)の比較。
全域にわたってAM06の方が静かなのですが、600Hzから上の、特に耳につきやすい周波数帯域がぐっと抑え込まれているのがわかります。
参考のために、従来型の扇風機(青むらさき)とAM06(赤)の比較はこちら。
音量はほぼ同じぐらいなのですが、従来型のほうが低域が強い感じ。
3台のノイズを聞き比べるビデオで音質と音量の違いをどうぞ。