The means justifies the ends
僕らの世代が「万博」と言えば1970年の大阪万博のことを指すわけですが、その万博の頃、時代の最先端のデジタル表示装置はニキシー管でした。電話帳ぐらいの大きさはあった電子卓上計算機も、鉄道の自動券売機も、最新鋭のエレベーターの階数表示も、ピンボールの点数表示も、デジタルな数字はみんなオレンジ色の放電管の光で作られていました。
70年代も半ばになるとニキシー管の時代は終わって、蛍光表示管やLEDや液晶の7セグメントの数字にほとんど置き換えられてしまい、それでも7セグメント表示での読み取り間違い(たとえば、ある桁が6と7の間でばたばた変わっていると、7セグメント表示では全セグメントが薄く点灯して、薄い8に見えるとか)を嫌う、周波数カウンタなんかではしぶとく生き残っていましたけど、80年代には普通の生活の中で見かけることはほとんどなくなってしまったように記憶しています。
そんなニキシー管ですが、ソビエト時代に軍用に大量に作られたであろう品物が、いまだにデッドストックとして細々と流通しています。
去年、ガイガーカウンター用のGM管を求めてロシアの真空管通販業者のWebサイトをうろついているときにみつけたのが、これ。ニキシー管を使ったデジタル時計のキット。
リトアニアの人がデッドストックのニキシー管を使ったデジタル時計を設計して、部品ひと揃いをセットにして通販してくれています。
僕らが子供の頃にデジタル時計を自作するときには、商用化されたばかりのデジタル時計専用LSIを使うのが普通でしたが、このキットはPICマイコンひとつで時計の機能を含むすべての制御をまかなっているのが21世紀風です。ニキシー管を照らす青いLEDも21世紀。
Webサイトからダウンロードできる組み立てマニュアルは英語ですが、組み立ての手順を一つ一つ丁寧すぎるぐらいに説明してくれていて、ハンダ付けがそこそこできる人なら1〜2時間で完成すると思います。
気をつけるポイント、というか私が間違えちゃったポイントは
電源のACアダプタはキットに付属していないので、どこかから9〜12V/0.5〜1Aぐらいのやつを調達してください。
完成すると、こんな風に点灯します。
ケースにいれずにむき出しで使ってもかっこいいと思いますけど、一応高圧がかかってますし、ホコリがたまるのもアレなので、透明ケースに入れてみました。ダイソーで売っていたフィギュア用ケースにぴったり収まりました。
このキット、リトアニアの tubehobby.com というサイトから注文できます。
私が買ったのは NCV3.1-16 というキット。
ロシアのニキシー管は、5の表示が2を上下ひっくり返した形になっていてかっこ悪いタイプがあるのですが、このキットで使っているIN-16(ИН-16)はちゃんと5の形になっていて、サイズも小ぶりで具合がよろしい。
アラーム付きの4桁表示で、時分、日付、秒の自動ローテーションや、温度表示も可能。表示の明るさもソフトウェアコントロールで、普段使わない時間帯は自動的に表示を消してニキシー管の寿命を長持ちさせる機能付き。
以前は定価59.99ドル+送料+保険で78ドルぐらいだったんですが、ちょっと値上がりして定価78ドル。おそらく送料込みで96ドル、日本円で8000円ぐらい。
個人レベルで細々とやってくれているので、ECサイトみたいな注文フォームがありません。contact usのページにあるメールアドレスに "I would like to order one set of NCV3.1-16 kit. Please let me know the shipment cost to Japan, and how to pay by PayPal." とかなんとかメールを送ると、送料込みの値段と PayPal のアカウントを知らせてくるので、PayPal で支払いをすればOK。PayPalのアドレス欄には漢字じゃなくてアルファベットで住所を記入しておいてください。2週間ぐらいで郵便小包が届きます。
デジタル置き時計に8000円払うなんて最近なかなかやらないけれど、こいつはそれだけの価値があると思いません?