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ずいぶん前に
イントロだけ書いてそのままになっていたアーシングについての考察の続きです。
考えていてもなかなか腑に落ちる説明が浮かんで来ないので、実験してみました。
アーシングがいろんなことに効くとされているというのは前に書いたとおりですが、はたしてそうなのかちょいと考えてみました。
アーシングの効果の「理論的」な説明をWebなどで読んでみると、大雑把に言って
- 直流的な抵抗が減ることによる効果(ヘッドライトが明るくなる、セルモータがよく回る、バッテリがよく充電されるなど)
- 交流的(というか、高周波的というか)インピーダンス低下による効果(プラグのスパークが強くなって燃費が改善)
- グラウンド電位が安定することによる電子回路の安定動作(エンジン制御用マイコンやセンサの電圧が安定するのでエンジンの動作が安定する)
が謳われているようです。
最初の直流抵抗については、簡単に実験できますからやってみました。ミリボルトまで読み取れるデジタルマルチメータ(デジタルのテスター
*1ですね)が数千円で買えるありがたい世の中ですのでこれを使います。
検体は「ラテンなのでアースが脆弱だ」ということになっているプジョー306XSi(N3SI)です。エンジンが回っているとオルタネータからの電流が流れてやっかいなので、エンジンを止めた状態でバッテリのマイナス端子とヘッドランプ直近のボディとの間の電位差を測ったところ、ヘッドライトON/OFF時で約10mV電位差が動きました。ヘッドライト(55W)には5A弱の電流が流れていると思われますから、アース側の抵抗は2mΩぐらいということになります。ここで擬似アーシングケーブルとして、ブースターケーブルをバッテリのマイナス端子とヘッドライト近くのボディにつなぎます。
このクルマ、走り始めてから1年もたたないうちに当時のプジョー306の持病のひとつとして有名なバッテリの突然死を体験しているのですが、そのとき普通の国産車に使うブースターケーブルではセルモータが回らなかったという経験があります。セルモータが電気を派手に食うので、細いブースターケーブルでは電圧降下が大きすぎて役に立たなかったのです。というわけで、クルマには「トラックや外車もOK」という太いケーブルを積んでいます。で、その太いケーブルでグラウンドをバイパスすると電圧降下が半分程度に下がります。とはいえ、バイパスしているときとしていないときではランプの明るさには変化は感じられません(12Vのうちの数十mVの差ですから、あたりまえですね)。
今度はエンジンを回した状態で、エンジンブロックとバッテリの間の電位差を見ます。この状態ではオルタネータからバッテリに向かって電流が流れているので、電位差の極性が反対になり、電位差は約135mVでした。電流がどのぐらい流れているのかは不明(クランプメータでもあればいいんですが)ですが、さっきと同じようにブースターケーブルでバイパスすると電位差が75mVぐらいまで落ちます。ここでもブースターケーブルがあると抵抗が半分ぐらいにはなるということはわかります。しかし、これでバッテリへの充電が目に見えて強化されるというレベルの改善ではありません。
セルモータを回しているときの電圧降下も見てみたかったのですが、テスターでは追えないのでやめておきました。クランク時は100Aオーダーの電流が流れているはず(バッテリ突然死のときに、JAFの人がクランプメータで測って見せてくれた)なので、仮に抵抗が10mΩあったとしても電圧降下は1Vぐらいということになります。この抵抗が半分になったとして、モータにかかる電圧が0.5Vぐらい高くなるというところでしょうか。いずれにしてもたいした差ではなさそうです。まあ、ここで大きな違いが出るほどアースの抵抗が大きかったりすると、100A以上も電流が流れたときは電圧降下が大きすぎてモーターが回らなかったりするはずですしね。
というわけで、直流的な抵抗が減ることの効果は期待できそうにはありません。
高周波的抵抗が減ることによる効果は、プラグにかかる電圧の波形の変化を見ればわかるはずです。が、マンションの駐車場にブラウン管オシロスコープを持ち込むのは、恥ずかしいのでやめておきました。
知り合いの配偶者さんで、某2輪・4輪兼業メーカーで点火系の電気屋さんをやっている人が、会社でアーシングの実験をやってみた(一応やってみるところが、さすがです)ときの結果では、有意な差は出なかったとのことです。
一番最後のやつは、どう考えても眉唾なのでパス。もともとオルタネータの脈流が乗っていて電圧も不安定なバッテリの電源をそのままマイコンのVccやら、センサのリファレンスに使っているわけがないし、制御用マイコンの設計者は電源やその他のノイズの影響を受けないように必死に設計しているはずで、バッテリからのアースの取り回しごときで素人目にわかるような動作の変化が起こるような設計をするわけがない。そんな不安定な設計のエンジン、怖くて公道を走れません。設計者は、こんなこと言われていて怒らないのかしらん。
以上の結果から、私にはアーシングが効くと信ずるに値する理由がみつかりませんでした。
だいたい、アーシングという名前が恥ずかしいですね。名詞+ingは、Let's ~ingと同じぐらいアタマ悪そうです。
それに、巷のアーシングったら、たいてい真っ赤なケーブルなんか使っています。電気屋さんの世界では、余計な間違いを防ぐために古来よりアースといったら黒か平打網線と決まっています。これもアタマ悪そう。
というわけで、私は自分の車にはアーシングをする気にはならないのですが、Webの上での体験談などを読む限り、みなさん満足していらっしゃるようだし、前述の大阪の友人などはボンネットの中がカラフルになるし心理的に満足できるんだからそれで十分、と割り切って遊んでいます。それはそれで、巷間のダイエット法にも似て、気持ちはわかりますね。
*1テスター: テスターといえば、小学生のときお年玉を貯めて初めて買ったテスターは
サンワのSP-6D。2KΩ/V(たとえばフルスケールで10V測れるレンジで、テスターの内部抵抗が2×10で20KΩということ。)という普及品で、とても今回のような何十mVの変化を読み取れるようなものではありませんでした。それでも2千円とか3千円とか、当時の私にはとても高価なものだったんですけど。
中村 尚弘さんのコメント:
年式が新しくなると、アースのポイントが
増えている車種もあるとか?