先日、組み込み用Bluetoothプロトコルスタック(無線接続技術であるBluetoothで、機器同士がデータをやり取りをするお約束事を司るソフト)を開発している
米Open Interface North America社のCEOである佐川明美さんが日本出張のついでに立ち寄ってくれました。
佐川さんは昔マイクロソフトの日本法人にいらっしゃって、ごく初期のワードのプロダクトマネージャーもやっていた女性。当時Windows対応のワープロソフトは私がプロダクトマネージャーとして立ち上げを担当していた(今は亡き)アミプロとワードぐらいしかなく、Windowsそのものも普及率が低く『国産のDOS版ワープロ(赤いやつ)対外資の(弱い)Windows版ワープロ』みたいな図式で市場導入に四苦八苦していたもので、競合会社の人というより同志のように感じます。
で、その佐川さんが、アメリカで6年ぐらい前に立ち上げたのが今の会社。元は日本のオープンインターフェース社が持っていたWindows用Bluetoothソフトの技術がコアなのですが、Windows用のプロトコルスタックは早晩本家マイクロソフトが標準装備してくるから勝負にならないと見切りをつけ、機器の組み込み用に集中する戦略を取って軌道に乗せたという経緯。
今回はお正月のCESでも他社ブースに展示されて注目を浴びていた
BLUEtuskというソフトウェアと、
SOUNDaboutという組み込み用ハードウェアソリューションを日本の機器メーカーに売り込む行脚のための出張だそうです。
BLUEtuskのほうは、Bluetoothでは速度が足りないという用途に対応するソリューション。
近距離の機器の間を無線を使ってつないでデータをやり取りするBluetoothですが、データの転送速度がそんなに速くなくて、音声ぐらいなら問題ないのですが映像などをリアルタイムでやり取りするにはスピードが足りません。
そこでそれに代わる高速の無線接続の規格としてUWB (Ultra Wide Band)という仕様が出てきたのですが、例によってIntel/TIのMB-UWBとMotorola/FreescaleのDS-UWBが標準の地位を争っていて、機器メーカーとしてはどっちが勝つか模様眺めでなかなか採用の勢いがつきません。
そこで、どっちが“来て”もいいように、ハードウェアの層はMB-UWBとDS-UWBの両方に対応して、その上のソフトウェアは Bluetoothのままで使えるようにしたBLUEtusk(tuskは牙。toothより太いから)というのを作ったそうです。これなら今までBluetooth用に作ったソフトウェアがそのまま使えて、速度はUWBなのでBluetoothより2桁速い。しかも、将来どっちが標準になってもそこだけ差し替えればOKなので、機器メーカーは安心して使えるというわけ。
一方のSOUNDaboutのほうは、今のBluetoothで高音質の音声を転送できるよう独自のコーデック(音声の圧縮復元のソフト)を開発して、全部のソフトウェアとARM7プロセッサを使ったハードウェアの基本設計までをセットにした出来合いソリューション。従来より高音質、低消費電力、低価格というのがウリ。たとえばヘッドホンとか携帯オーディオ機器とかにそのまま組み込んで、あたらしいワイアレスオーディオ機器を開発してもらうことを狙っているそうです。
ここまでくるのにいろいろご苦労もあったんだろうと思いますが、知り合いが活躍する姿を見るのは、なんともうれしいものです。いいビジネスのチャンスが広がるといいなと思います。
Yaginumaさんのコメント:
懐かしい限りです。