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データベースを構築する際に、一つ一つの「レコード」に、それぞれユニークな(一意、つまり、ほかのレコードでダブって使われることがない)「キー」をつけます。
これがあると、その「キー」を軸としてほかのデータベースとの連携が簡単・確実になります。たとえば、ダイレクトメール屋さんがDM送り先のリストを作るとします。このとき「だれそれさんのキーは○○番」ということがしっかり決まっていて、そのキーがいろんなデータベースにそれぞれちゃんと記録してあれば、キーの番号を基にしてあっちのデータベースから住所と名前、こっちのデータベースから電話番号、こっちのデータベースから給与振込先銀行口座の残高、なんてのをかき集めて「普通預金残高100万円以上で30歳以上の人のリストを作って、その人にDM送って、電話セールスをかけよう」なんてことが簡単にできるようになります(Oracle とか SQL Server という名前で売られているリレーショナルデータベースっていうのは、そういう処理が得意です。)
これまではそういう「ユニークキー」がなかったので、名簿屋さんは苦労して自宅の電話番号とか住所を「擬似キー」にして、一生懸命「名寄せ」をして、高く売れる(業者が使いやすい)名簿をこしらえようと努力してきたわけですが、なにせ電話番号には一家全員の名前が紐付けされているので「ユニーク」じゃないし、住所は表記がばらつく(○丁目○番○号と書いたり、○-○-○と書いたり、マンション名が書いてあったり無かったり……)とかで、いろいろ大変だったわけです。その上、電話番号や住所はころころ変わりますしね。
ところが、これからは簡単になりました。「住基ネット」という仕組みができて、お国が「一意性」を保証してくれる、確実なユニークキーが運営されることになったからです。
で、早速、銀行口座と「住基ネット」の番号を紐付けしたデータベースを作ろうという動きがある(あった)そうです。
朝日新聞などの報道( www.asahi.com/national/update/0217/016.html
*1)によると、全銀協が口座開設の時に住基ネットの番号通知のはがきで本人確認をするよう各行に指導していたとのこと。そりゃ、銀行は「架空口座を作らせるな。本人確認をして、口座を名寄せしろ。」とご当局から言われているわけで、今まで「ユニークキー」がなくて名寄せに苦労してたのが、お上がせっかく作ってくださったユニークキーを使わない手はないと思いますわね。気持はわかる。
今回は気がついた人がいて「なんじゃゴルァ、約束が違うだろが」とツッコミがあったので「今後こういうことが起こらないようにしたい
*2」(片山総務相)というご答弁があったようですけど、ご当局に厳しく管理されているはずの銀行さんですらこれですからねー。「民間」じゃ、そのうち住基ネットの番号をユニークキーにした便利なデータベースがたくさん発生しちゃうんでしょうね。
というわけで、みなさん、住基ネットの番号のお知らせのはがきは、絶対にほかの人の目に触れないところにしまっておいて、間違っても銀行やクレジットカード会社や貸しビデオ屋さんやお役所の窓口なんかで番号を教えたりしないようにしましょう。
念のため時々お役所に出かけて「番号が漏れたような気がして心配だから、番号を変えてください」とお願い申し上げるのもよい考えです(本人の申し出によって変更してくれる決まりになってます)。
まだ開封してない人は「覚えのないDMだと思う」と返送してしまうというのも楽チンです。郵便局はそういう身に覚えのないDMは、きちんと返送してくれます。
あとは、お役所に保管してある住基ネット(住民基本台帳)のデータのバックアップテープが盗難などで間違って流出したり、システムの設計や構築に関わった計算機メーカー系SI業者さんの従業員や派遣社員さんが自宅作業用にデータを持ち出したりするなどという「考えられない事故」が起こらないことを祈りましょう。
あ、ちなみに、私は
国民共通番号制に反対の立場のものです。念のため。
*1: asahi.com はリンクを張らせていただくためのルールがめんどくさいので、リンクにしてません。自分でURLをコピーして開いてください。あしからず。
*2: 念のため申し添えますと民間業者が住基ネットの番号を尋ねることはホーリツで禁止されています(たいした罰則はないけど)。「起こらないようにしたい」って「思い」を述べられても、ねぇ……。「絶対起こることが無いような抜本的対策」を立ててくだせぇ、お代官様。頼むからさ。
樋口 理さんのコメント:
嘘はいけませんね。