The means justifies the ends
20世紀の終わりごろからだと思うのですが、街角の交番の看板が突然「KOBAN」という表記に書き換わりました。
当時の新聞の記事で「Koban はイギリスの英語辞書にも載るようになって英語になった。市中の外国人も増えてきたので社会の国際化に対応するべく看板を掛け替える」といったような説明を読んだ記憶があります。
爾来ン十年ずっと思い続けているのですが、これって、も・の・す・ご・く、間抜けです。
警視庁の Web サイトにも説明が載ってました。
Q6 なぜ、「KOBAN」と書くのですか。
答 ある国の固有の文化などを類似のない外国に紹介する時は、無理に訳さないで発音のまま紹介しています。日本では、「相撲(SUMO)」「歌舞伎(KABUKI)」などがあります。
日本独自の制度である交番制度は、「KOBAN」システムとして、米国の大学教授D・H・ベイリー氏によって紹介されたり、英語文献にもKOBANの表記が見られ、次第に国際語として市民権を得るようになりました。
警視庁
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/webpb/info/06.htm
あれ?日本独自の文化を外国に紹介する話になってるよ。日本国内の街角に掲げた看板で、日本文化を外国に紹介するの?
看板の国際化対応って、つまり、日本にやってきた外国人の方がなにか警察に相談するような事態に陥ったときに「警察の窓口はここですよ」ということがわかるような看板にするっていうことですわな。
Koban っていう単語が辞書に載ったとか、ましてや交番制度を紹介する文献に載ったからって言って、普通の市民に広く通じる単語になったと思うという思考回路が、なんというか、かなりナイーブでおめでたい。
普通の外国人が「Koban」という看板を見て警察を想起する可能性なんて百に一つもない、と断言していいと思う。
(交番制度が「輸出」された、世界のごく一部の狭い地域で、限定的に「KOBAN」という表記が使われていることは知っていますよ。念のため。)
ニッポンの「Anime」が国際的に受け容れられているから輸出の柱にしよう、という議論と似ていなくもない。
クールジャパンはともあれ、交番のガイジン向け看板はふつうに「Police」とかでいいんじゃないでしょうか。
オリンピックまでにはなんとかしたほうがいいかもね。