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The means justifies the ends

ブランドの変遷 [Gibsonが買ったのはTEACじゃなくてTASCAMとEsotericなのだ]

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記者会見の冒頭でギターセッションをするギブソンのジャスキヴィッツCEOとティアックの英社長。
東洋経済の取材記事より)

以前、役員としてティアックの事業再生のお手伝いをさせていただいた立場上、あまり突っ込んだ話はできないのですが……

アメリカの楽器メーカーであるギブソンがティアックの株式をTOBで買い付けて買収するということが発表されました。

私の身の回りの反応はざっくり分けると以下の3種類。

  1. TEACって何?(そもそもそんなブランドをしらないお若い方)
  2. なんでギター会社がTEACを?(TEACといえば、CDとかDVDのドライブのメーカーだよね、という30代後半ぐらいのPCユーザー)
  3. なるほどね。(TEACと言えば2トラサンパチだったりポータスタジオだったりするオヤジども)

けっこうマジョリティだと思われる、2の反応をしたみなさんに、簡単に解説を。

ティアックはもともとオーディオ用テープレコーダー(テープデッキって言いましたね)のメーカーです。

その技術を元に音楽用のマルチトラックレコーダーを作った。で、その楽器とか音楽録音製品のブランドがTASCAM。アメリカではギターセンターみたいな楽器量販店などでとても強いブランド。

テープレコーダーの市場が廃れ始めたころに、テープの磁気記録の技術を使って、当時一般に使われ始めたフロッピーディスクドライブ(5インチ、後に3.5インチ)を安く作り始めて、それが次の収益の柱に。

その後フロッピーが死にそうになる前に、DENON(当時はデノンじゃなくてデンオン)から来た光ディスクの技術者が作ったCD-ROMドライブを作って、FDDで作ったPC周辺機器事業領域がさらに強化して大黒柱になりました。

ところが、市場の流れでCDからDVDに流されていくと、DVDの特許を持っていない製造メーカーは、ライセンサーへの支払がかさんで薄利多売の商売に引っ張り込まれ、収益の柱がズタズタになって会社全体の経営が悪化しちゃった。

一方、テープレコーダーから続くオーディオ機器の事業は、自社では何にも生産しないで中国の安い機器を仕入れてTEACブランドだけつけて安売りする方向にシフト。中近東、東南アジア、オーストラリアなどで、テレビとかエアコンとかまで売れる物にはなんでもTEACのラベルを付けて売ったものだから、これもブランド価値なくなっちゃった。

それに辟易して、ホンモノの超高級オーディオを国内自社工場で作るブランドがEsoteric。CDプレーヤーから始まって、SACD/DVDプレーヤー、アンプなどを作っています。
タンノイなんかの輸入もやってる。

独断と偏見によるTEACブランドの変遷

TEAC
(オーディオ)

TEAC
(産業用機器)
TEAC
(PC周辺機器)
TASCAM Esoteric
オープンリールテープデッキ
       
カセットテープデッキ
テープデッキの磁気録音技術から、データレコーダー   テープデッキの磁気録音技術から音楽用マルチトラック録音機器(MTR)
米国を中心にヒット
 
    磁気記録技術とメカ技術から、安価で堅牢な5インチフロッピーディスドライブ(FDD)
MTR以外の音楽録音用機材各種に商売を拡大  
    3.5インチFDD
   
テープレコーダーの市場はなくなり、空気清浄機やテーブルタップなど、あらゆる非オーディオ製品に手を出しオーディオとしてのTEACブランドを毀損。
データレコーダーの技術をデジタル化するが、デジタルデータの市場はPCに食われる。 DENONからの技術者による光ディスク技術とFDDの商流からCD-ROM/CD-Rドライブ
MTRの多重録音など、各種技術をデジタル化 光ディスクドライブのメカ技術とオーディオ回路の技術から、国内自社工場で生産超高級オーディオにシフト。
毀損したTEACブランドを嫌いEsotericブランドを立ち上げ
中近東、東南アジア、オーストラリアで、仕入れ品にTEACブランドを付けて、安価なオーディオ、テレビ、エアコンなどを売り、海外のTEACブランドを希薄化。
データレコーダの入口に当たるセンサーの商売を追加。
光ディスクドライブを使った医用画像記録機器なども展開。
市場の流れでCDからDVDへ移行し売上を大きく伸ばすが、DVDは特許を持っているライセンサー企業以外のメーカーは利益が出ず、経営の屋台骨を傷つける。  音楽用ソフトウェアや、ギターアンプまで、音楽産業用製品や録音機器を幅広く展開、着実に収益を改善
 
現在:中級オーディオやPC用オーディオインターフェースなどでオーディオのブランドとして出直し。オンキヨーとの業務・資本提携。 現在:粛々と継続中。 現在:市場が急速に縮小しているため、薄型ディスクドライブを中心に縮退運転中。 現在:プロフェッショナル用音楽機器ブランドとして、米国と日本で健闘中。 現在:収益貢献は大きくないと思われるが、超高級オーディオのフラッグシップブランドとして健闘中。

ブランドの流れを時系列にまとめてみたのが上の表です。黄色く色を付けているところが、その時々の稼ぎ頭の事業。

もう何年もティアックの財務諸表すら見ていないので推測ですが、現在収益が伸ばせる可能性が高いのは、TASCAM、そして拡販がうまくいけばEsotericのはず。
そして、そのTASCAMは、米国では楽器と音楽用機器の市場で一定のポジションを持っているので、Gibsonから見ると市場的にも製品展開的にも、とても親和性の高いブランドに見えるはずなのです。

現在、ティアックの社長をつとめる英(はなぶさ)さんは、生え抜きのTASCAMの人。ますますのご活躍をお祈りします。

ところで、Gibsonから提示されているTOB価格は一株あたり31円だそうです。直近の市場での終値とか、再生ファンドが買収した時の条件などを見比べてみると、いろいろなドラマが見えてきて興味深いと思います。

それから、ブランド価値の話をすると、TEACというブランドも、毀損したというよりは忘れられたという意味合いが強いので、本気で再生したければリセット可能だと思われます。誰とはなく

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