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The means justifies the ends

マーケティングがタコでもいいじゃない [Microsoft Songsmith]

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Beat It の新解釈
こないだ Microsoft Research からリリースされた Microsoft Songsmith という作曲支援ソフト。作りたい曲のジャンルとテンポを選んで録音ボタンを押すと、設定したテンポでドンカマが鳴って、そのリズムに合わせてマイクから歌を歌うと、自動的にメロディを解釈して伴奏を付けてくれるというもの。

早速、作者の意図とはちょっと違う楽しみ方が開発されているようで、おなじみの有名な曲からボーカルだけを抜き出して、Songsmith に入れて、元とはまったくちがった伴奏を作らせて笑うという、機械にマッシュアップさせた「作品」が YouTube に上がっているようです(TechCrunch: Microsoft Songsmithで作った伝説のヒット曲は、痛いほどスゴイ)。
上のは、マイケル・ジャクソンの Beat It (邦題は「今夜はビート・イット」だったって、覚えてた?)を Songsmith に解釈させたもの。笑える。

この Songsmith、プロモーションビデオが痛いとか、内蔵されている音源の音が古くさいとか、UI がださいとか、あまり本質的とは思えないいろんな理由であちこちでこき下ろされているけど、僕は純粋に「すごい」と思いました。皮肉とかそんなんじゃなくて。 1981年の秋だったと思いますが、NEC が、家庭用のパソコンとして PC-6001 を出したときのこと。当時としては珍しく三声の和音が出せる機械だったので、それをフィーチャーすべく、製品発表会のイベントでのデモは、この新発売のパソコンに過去の歌謡曲のメロディを大量に記憶させて、パソコンがそれを元に即効で歌謡曲風の曲を自動作曲して演奏して見せる、というものでした。そのデモプログラムを、当時学生だった私たちが作ることになったんです。

ちょうど YMO が大活躍をしていたころ、MIDI 規格がまとまった直後ぐらいで、パーソナルなコンピュータで音楽をするというと、せいぜいコンピュータやシーケンサにあらかじめ音楽のデータを打ち込んでおいてシンセサイザーを鳴らして、人間がそれに合わせて演奏するというのが時代の最先端でした。
もちろん、自動作曲とか自動伴奏も研究されていましたけど、あくまで論理的な実験のレベル。人間が聞いて納得できるような楽曲を機械が作るなんていうことは夢みたいな話でした。

で、そのデモのプログラム。もう時効だろうから暴露すると、NECさんからいただいた依頼は、あらかじめあちこちの演歌から1小節ずつぐらい切り貼りして人間が作っておいたメロディを、いかにもその場で機械が自動作曲して演奏したかのように見せてくれ、というものでした。
クロック 4MHz の Z80 に RAM 16KB で、外部記憶は 1200 bps のカセットテープという程度の機械にまともな自動作曲なんて芸当ができるわけないのはちょっと考えれば分かりそうなものですけど、こんなインチキなデモで「コンピュータってすごいでしょ」って思ってもらえた、なんとも牧歌的な時代でした。

そんな時代から四半世紀で、機械に合わせて人間が演奏するんじゃなくて、人間がナマで歌ったものに、機械が1パスで伴奏を付けてくれる、しかも少なくとも爆笑できるぐらいまでには音楽的にもきちんとしたものを、ほぼリアルタイムに聞かせてくれるなんて、それも自宅にある普通の PC で、マウスの操作ができれば誰でも使えるなんて。これって、パソコンが横森良造さんの領域に近づいたってことだよ。

役に立つモノじゃないかもしれないけど、市場のニーズを調べてマーケティングしてないかもしれないけど、そんなのどうでもいいじゃない。
技術の進歩ってこういうものだと思いますよ。

コメント

名ばかり管理職さんのコメント:

1981年秋に私が受験生をしていたころ、
ひぐちさんはそのような「お仕事」を
すでにやっていたんだ。ということを
再認識しました。
「横森良造さん」を知らない世代には
横森良造さんのすごさがよく伝わらない
かもしれません。
2009/2/6 12:33

樋口 理さんのコメント:

いや。「私は年を食ってます」ということ以上の意味はないわけです。

しかし、そうか。横森良造さんのすごさは、伝わりにくいですか。でも、この文脈であの人に匹敵する適切な比喩が思い当たらないなあ。横森先生は神だなあ。
2009/2/7 01:39

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