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先日、アメリカのとある(小さな)業界トップの会社の経営メンバーが退任するというニュースを聞いたときのこと。
ニュースを聞いた日本のある会社の経営者の方が「これでこの会社は一気にダメになる」とおっしゃっているのを聞いて「おや?」と思いました。私は「この人の役割が終わって、会社が安定して回るようになったから離れるのかな」と思っていたのです。
ずいぶん前、
Built to Last: Successful Habits of Visionary Companiesという本の著者の講演で次のようなエピソードを聞きました。
著者の方が、会社経営者・マネージャー対象の講演で聴衆に「今、ビル・ゲイツがいなくなったらマイクロソフトは会社として生き残れると思うか?」と聞いたところ、大多数の聴衆が「生き残れない」と答えたんだそうです。
実はこの本は「何十年経っても元気で生き残って発展している会社の、長生きの秘訣」といったようなテーマの本で、著者は「よい経営者は、自分でがんばって業績をよくするが、ややもするとリーダー本人がいなくなるとその業績が続かない。本当によい経営者は、仮に自分がいなくなっても会社が会社として生き残って発展していくように会社を設計する。たとえて言うと、前者は『正確に時間を告げる能力がある人』だが、後者は『正確に時を告げる時計を作る人』みたいなものだ」といったことを言うためにこのマイクロソフトの例を出して話していたのです。つまり、「ビル・ゲイツは『正確に時を告げる人』ではあるけれど、マイクロソフトを『正確に時を告げる時計』として設計できてはいない」という話でした。
それから10年ほど経った今、振り返ってみると、この本の内容はともかくビル・ゲイツの喩えははずれだったように思います。むしろ、ゲイツはマイクロソフトを永続的に『時を告げ続ける』会社として設計し終わって、その会社の運営を次の人たちにバトンタッチしようとしているように思えます。
ここのところ、いくつかの会社の経営を見てきて、会社を永続的に回り続けるように設計・運営するというのはとても難しいことなのだ、と痛切に感じます。
「会社は人なり」というのはそのとおりなのですが、それが行き過ぎて特定の人のスキルに頼る属人的な経営になってしまい、キーパーソンがいなくなったり、その人の「冴え」がなくなったら事業がうまくいかなくなる、というケースが実に多いのは皆さんご承知のとおり。また、そういうことの繰り返しで組織としてのバイタリティを失ってダメになってしまった会社の例もいくつもあります。
で、話を元に戻して、経営トップ交代とか会社の買収と聞くと無条件に悪いニュースだと思い込む方がいらっしゃるようですが、むしろ逆のほうが多い気がします。
だいたい、長年業界のトップを走っているようなエクセレントカンパニーは、たいていの場合キーパーソンがいなくなっちゃったぐらいで経営が傾くようなヤワな造りじゃないことが多いです。あるいは、キーパーソンがいなくなったら傾くぐらいのステージの会社じゃ業界トップは走り続けられない、と言うべきか。
その一方で、そういうキーパーソンが抜けないように一生懸命努力するのも経営の大事なお仕事ですけどね。
いやはや、経営って難しい。
けつねさんのコメント:
そういえば、技術も人に属してしまったらいかん、とにかくドキュメントを残せとよく言われます。
厳密にはここで言われているのは技術情報で、その人にしかできない職人技はセンスに近いので、手順だけ真似しても同じものはできない、という領域は存在すると思いますが。