マーケの出番 [政治活動とPR]
樋口 理 2005/9/14 13:35
[PR] 本ブログの商品紹介リンクには広告が含まれています
衆院選が終わりました。
選挙期間中にインターネットの上で選挙のことを「いじる」といろんな筋からいじめられることがあるということを、某ポータルサイトのお仕事をしていたとき学習したのでじっとがまんしていたのですが、選挙期間中どうしても気になっていたことがあるのです。
朝、いつもの習慣で流しっぱなしになっていたNHKのテレビで、ある野党の政見放送が流れていました。そこの党首の、小学校で標語を暗誦する学級委員みたいな調子の演説の中に「○○党は、憲法9条を変えて、日本を戦争のできる国にさせません。」というフレーズが入っていました。字幕もついていて、このとおりの句読点が打ってありました。さて、ここで問題です。この政党は、憲法9条を変えたいのでしょうか、変えたくないのでしょうか。
もちろん、いくらノンポリの私でも、この人たちの主張の内容は「憲法9条を“改正”して日本も戦争ができる国にしたい、という他党の動きに○○党は反対する」だということぐらいは、分かります。分かりますけどね、こういう語順でこの句読点は、どうだろう。これじゃ「○○党は、憲法9条を変えて、」まで聞いたところでは、9条を変えたいのだとしかとれない。
この信条を金科玉条として本気で訴えたいのならば、この作文はいけない。言い換えると、このポリシーを、ターゲットオーディエンスである有権者のハートをわしづかみにするシンプルでインパクトのあるメッセージとして打ち出したいのならば、こんなコピーライティングじゃいかんでしょう。自分でできないなら、ちゃんとしたコピーライターを雇えばいいのに。
その後、政見放送は、この党首と茨城の選挙区の候補との対談形式のプログラムに続いたのですが、そこでの党首さんの第一声は「イバラギのみなさん、こんにちは」。これを聞いたイバラキ県の有権者の70%(推定)が政治信条に関係なくこのヒトに失望したにちがいない。いや、ひょっとしたらイバラキと言っていたのかもしれないですけど、少なくともイバラギと聞きちがえるような発声だったことは間違いない。本当にコトバの力で大衆を動かしたいなら、この人、メディアトレーニングとかボイストレーニングを受けたほうがいいと思う。
たまたま眺めていた党の政見放送のことだけ書きましたけど、実は特にこの政党だけがどうとかということではなく、全般的にニッポンの選挙運動はパブリック・リレーションズとか、もっと広くマーケティング全般のノウハウをきちんと導入したほうがいいと思うのです(マーケッターのみなさん、ビジネスチャンスです。僕らにはAIDMAの神がついている)。とくに、劇場型政治においては、ね。
さて、今日のお勧めは本多勝一の「日本語の作文技術」。本多勝一という名前を聞いただけで思考停止的に拒絶反応してしまう方もいらっしゃるかとは思いますが、そういう方もこの本はきっと学ぶことが多いと思います。
冒頭の政見放送の文章を字幕で見てまっさきに思い浮かべたのがこの本だったのですが、テン(、)をどこに打つべきか、あるいは打つべきでないか、一つの語を複数の語が修飾するときにどういう語順で言葉を並べるべきか、といったことを理論的に説明、ルールづけしてあって、この本の最初の何章かに書いてあることを実践するだけで、自分の伝えたいことが誤解なく確実に読者に伝わる文章が誰でもめきめき書けるようになる本です。
コメント
コメントを書く
関連するかもしれない記事
産経新聞社会部の選挙班が、選挙期間中特設でツイッターでのつぶやきを流していました(サンケイの人が...
この記事を読む »
そうそう。選挙がにぎやかなので忘れてました。
グルコースハードウェア隊の武田泰弘隊員が、天...
この記事を読む »
本日のドタバタは、こちら。
“閉鎖の小泉氏Twitterやっぱり「本物」 事務所が連絡ミス”(ITmedi...
この記事を読む »
プライムタイムのテレビ、番組と番組の間の20:54とか21:54とかにミニ番組が挟まってますよね。
あれ...
この記事を読む »
家に帰ってみたら、テレビは憲法の前文の理念を謳う内閣総理大臣の映像で埋め尽くされていますが、そん...
この記事を読む »
銃にも合衆国憲法にも特段の興味があるわけじゃないんだけど、通勤中に CNN の Podcast で知った銃関係...
この記事を読む »
パソコンのUSBポートにつないでテレビの地上デジタル放送を受信する安いドングルを、広帯域のラジオや無...
この記事を読む »
センター長さんのコメント:
本多勝一の「日本語の作文技術」まだお持ちでしたか。私の持っていた本はどこかにいってしましました。作文の苦手な理科系には、なかなか役立つ本だったと記憶しています。