アップルのトップページにビートルズ

昨日、アップルのトップページに「明日、いつもと同じ一日が、忘れられない一日になります。」という思わせぶりなティーザー広告が出ていて、いったい何が出てくるのかと一部で話題になっていましたが、日本時間の深夜0時になって出てきたのはビートルズ。
重大なお知らせは、ビートルズの曲が iTunes で買えるようになった、ということでした。朝のCNNや、国営放送のニュースまでもが、この件を大々的に取り上げている一方で「なんで、そんなことが忘れられない一日なんだよ」と納得いかない方も多い様子。
ビートルズの曲はいままでオンラインでは販売が許されていなかったので、純粋にオンラインでの楽曲販売にとって象徴的なできごとと言えると思いますが、ひょっとすると、アップルにとってビートルズはそれ以上に「忘れられない」意味を持っているのかもしれません。
キーワードは「ソゥスゥミィ (sosumi)」。


Sosumi というのは、Macintosh の OS に標準で入っているエラー音のひとつ。20101117-Sosumi.wavです。
Wikipedia の記事によると 1991年に出た System 7 から入っているということなので、それからずっと20年近く使われていることになります。
この Sosumi という名前が奇妙なので、当時からユーザーの間ではどういう意味なのかが話題になっていたんですが、実はこれ “So, sue me!” (「だったら、訴えてみやがれ」ぐらいの意味)という英語をもじったものだと言われています。
アップルコンピュータ(当時の社名)は、ずいぶん前からビートルズの楽曲の権利を持っているアップル(レコード)から商標権を侵害していると訴えられていて、一度はアップルコンピュータ側が賠償金を払って、アップルコンピュータは音楽ビジネスに進出しないという約束をさせられて決着したのですが、その後 Apple IIGS とかにシンセサイザー音源チップや MIDI インターフェースを搭載したことを「音楽ビジネスへの進出だ」としてまた訴えられ、1991 年に敗訴して2650万ドル払わされ「音楽主体の創造物に Apple の商標を使わない」と約束させられています。
その時に出た OS に入っていたのが、この “Sosumi”。Mac の起動音や、これらのビープ音が「音楽的創造物」として訴えられるかもしれないと恐れた法務担当の弁護士から「(「チャイム」とか「木琴」と名付けようとしていた)ビープ音の名前が、あまりに『音楽的』だ」とかいろいろクレームがついて、それに対する反抗で “Let it be” をもじって “Let it beep (ビープ音、鳴らさせとけ)” と名付けようとしたけど、さすがにあからさまなので、だったら、ということで「じゃあ訴えてみやがれ」という意味の “So sue me” を “sosumi” と綴りを変え、「これはただの日本語の単語で、音楽とは関係ない」と言い張った、というのが定説。「訴えてみやがれ」と言っている相手はアップル(レコード)とくだらないことで仕事の邪魔をする法務の担当者なんですね。
そんなこんなで、アップルコンピュータとアップルレコードは30年近い確執を抱えているわけで、そんなアップルレコードの楽曲を iTunes 流通の傘下に収めることに成功して、ジョブス様もさぞかし溜飲を下げていることだろうとお慶び申し上げます次第です。そりゃ、忘れられない一日でしょうとも。ええ。
雑学ついでに、アップル(コンピュータ)のWebサイトのHTMLソースを開いてみてください。ページの一番下にある著作権や使用許諾などの法的文書へのリンクがある部分の div の class 名も “sosumi”。
ビートルズの写真や © Apple Corps Ltd. の文字が並ぶページの下に So, sue me! の残骸が残ってるのは、なんとも皮肉ですねえ。

ドキュメンタリー “Welcome to Macintosh” のボツシーン。当時のサウンドコントロールパネル担当者の Jim Reekes の証言ビデオ。

投稿者 樋口 理

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