ちょっと前だけど、イー・ウーマンのサーベイでニューズ・ツー・ユーの神原さん(カタカナ多いな)が《ベンチャーに新卒入社という選択、「有り」だと思う?》というお題を投げていました。
5日間の投票の結果は「あり」が419票、「ない」が122票で圧倒的に「あり」。もっとも、この文脈で「ありだと思う?」と尋ねられたら「あり」と答えるほかないような誘導尋問なので社会統計としてはかなり「?」ですね。
この質問をちょっと変えて「新卒入社でベンチャーと非ベンチャーのどっちを選ぶ(あるいは、どっちを勧める)?」と尋ねられたら、ベンチャーの起業を支援している立場からは、「非ベンチャー、それもできるだけエスタブリッシュされた会社がお勧め」と答えると思う。
理由はいくつかあるんだけど、むりやりまとめるなら「エスタブリッシュされた会社の方が、圧倒的にすばやくベンチャーに必要な経験値がアップできるから」。
若いベンチャー、特に技術系ベンチャーのみなさんは「自分たちのぬきんでた技術と実行力で、社会を変えるのだ」という信念に動かされてカイシャをやっているわけです。その意気や、よし。
でも、その優れた技術と強い情熱が社会で認められてビジネスとして成立するためには、自分一人がとんがっていても何も起こらなくて、非ベンチャーの会社と競合して優位に立たなければならないし、競合優位に立つためには世間の“その他大勢”の非ベンチャーのみなさんと、顧客や仕入れ先や協業相手などのステイクホルダーとしておつきあいしなければなりません。
逆説的なようだけれど、技術とヤル気とスピードが既存企業との差別化ポイントであるベンチャー企業は、宿命的に既存の非ベンチャーのお仕事のルールや、スタイルや、考え方をよく知っていないといけないんですね。
ところが、新卒でいきなりベンチャー企業に入社した場合、会社ではそれこそ名刺の受け渡しひとつだって誰も教えてくれない。むしろ、場合によってはそういうことを気にせずに自分たちが信じることだけをやっているのがベンチャーの取り柄だと勘違いしている人たちも多いから、ビジネスの上で非ベンチャーの会社とおつきあいする上でのプロトコルやルールを、失敗を重ねながら苦労して自力で学ぶことになります。
一方、エスタブリッシュされた会社に新卒で入社すると、カイシャのルールや考え方を効率よく教えてくれるプログラムが用意されているし、身の回りが生きた教材みたいなものだから、社会で生きていくためのしきたりがめきめき身につくしくみになっている。その上、非ベンチャー側から見るとベンチャーがどのように見えるかという感覚も身につくので、ベンチャーに入ったときに「世間知らずで身の程知らずの独りよがり」に陥る危険性も減りますしね。
これが、私が新卒で非ベンチャーに入社することをお勧めする理由。
もっとも、エスタブリッシュされた会社は学校ではないので、漫然とそこに勤めているだけじゃ本質的なことは身につかず、社畜になっちゃうだけかもしれない。「今後、自分はこういうやり方の人たちを敵や味方にしてビジネスをやることになるんだ」という意識を持って学ぶ姿勢を忘れずにいることは大事ですね。
また、ベンチャーに新卒入社したからといって卑下することはなくって、自分たちの小さな世界に酔わずに、向こう側のしきたりや考え方を常に学びながら育っていくのだという意識と覚悟さえあれば、なんら問題なし。そこさえ間違えなければ、ベンチャーの方がずっとスピードが速いんだから。
彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一敗す。
彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし。
150%くらい同感です。
しかも、当面はVCにとっていい環境ではないですし、経営や人生の素人が簡単に成功できる仕事ではないですからね。
安東さんからの心強い賛同コメントをいただいたので調子に乗って蛇足を加えちゃおう。
> 当面はVCにとっていい環境ではないですし、経営や人生の素人が簡単に成功できる仕事ではない
これ、まったくそのとおりで、特にこういうご時世、立ち上げ期のベンチャーに対してリスクマネーを投じる投資側が投資先に期待するのは、すぐに業績を上げて投資回収に近づけてくれる即戦力のはずで、新卒の「育成」に貴重な時間とその他リソースを割くことは歓迎されないはず。なので、経営側も投資家に一定のリターンを返すところまでは新卒育成はがまんせざるを得ないと思うのです。
ベンチャーに入社する側もしっかりした志と自立心を持っていないと、雇う側、雇われる側ともにつらい思いをするおそれありということを知っておいてほしいですね。虎穴に入るわけですから。