うちの会社《アーキタイプ》は、技術系、特にIT/ネット技術系のスタートアップ企業を、創業してからベンチャーキャピタルから投資していただけるぐらいの規模になるまでハンズオンで支援する、インキュベーションの事業をやっています(その一方で、普通のオトナの企業向けに、ネットやITの分野で新規事業を興すことのコンサルティング事業もやっています)。
創業パートナーで社長の中嶋淳がよくこんなことを言います。

ベンチャー企業を始めようっていうのは『バンドやろうぜ』っていうのによく似てる。いろんなパートが得意な、気のあった仲間を見つけてバンドを始めるのと同じように、コアな技術が得意な奴とか技術をユーザーが使いやすいようにまとめるのが得意なやつとか、売るのが得意なやつとか、気の合うのが集まらないと会社がうまく回らない。インキュベーターの役割はバンドのプロデューサーみたいなもんで、プロデューサーが自分では演奏しないんだけど、バンドの構成とかどの曲をどう聴かせて売り出すか、みたいなことをバンドといっしょになって考えて、口を出して、お金とか機材の手配をするのと同じだ。

この喩え、私もとても気に入っていて、ときどき拝借しているんですが、海の向こうでも同じようなことを言っている人がいました。
Business Insider に載っていた “Starting A Tech Company And Starting A Band Are Pretty Much The Same Thing” (技術系企業を始めるとのバンドを始めるのはかなり同じような事)という記事。
うれしかったので、さくっと概要だけご紹介。少しずつ内容とかレイアウトに手を入れるかもしれません。詳細は原典をご参照あれ。

  ロックバンド 技術系スタートアップ
第1段階

バンドを組む

お互いのスキルを補い合えて、バンドのビジョンとサウンドを共有できるメンバーを見つけるのが大事

チームを組む

お互いのスキルを補い合えて、これから産み出す製品・サービスのビジョンを共有できるメンバーを見つけるのが大事

第2段階

オリジナルの曲を作る

お客さんにとってなにかが新しく聞こえる曲がないことには始まらない

使える製品・サービスを作る

アイデアは大事だけど、まず動くプロトタイプがないことには始まらない

第3段階

対バンできるバンドや演奏させてくれる場所との人脈を求めて巡業

作った音楽をオモテにさらしてブランドづくり。汗をかけ。そして、この段階はまだ手弁当

ほかのスタートアップ経営者との人脈作り、投資家や影響力のある人たちと会いまくる

投資対象にしてもらうまでには時間がかかるかもしれないけど、できるだけ多くの人のレーダーの中に映っていないとね

第4段階

CDやグッズを売る

デモを録音してWebに載せよう。楽曲といっしょにTシャツとかのしのぎの売上を足すと、収支を改善する助けになる

作った製品を自分でマネタイズする

創業だ。一円も出資を受けられなくても会社が続けられるように。自分でお金を稼げることを示して、投資する価値がある対象だということを証明

第5段階

インディーレーベルと契約

一生懸命演奏すること、忍耐、そして運。三つ揃えば小さなレーベルと契約してもらえる

エンジェル個人投資やシード投資

一生懸命働くこと、社会からの裏付け、そして運。三つ揃えば初期の投資を受けられる。そして、製品を次のレベルに高めるスピードを上げられる

第6段階

狂ったようにツアーに専念

仕事やバイトを辞め、家族や友達や睡眠やシャワーにさよならを。これから、メジャーレーベルを納得させるだけのファンを獲得するまで、永遠の旅に出るのだ

狂ったように製品・サービスの追加と改善

(もしまだだったら)退職。自分のアパートや本屋のコーヒーテーブルで週80時間働いて、ベンチャーキャピタルを納得させるだけのユーザーと顧客を積み上げるのだ

第7段階

メジャーレーベルと契約

ブレークが来た!まだほんの始まりだけど、やっとちゃんとした楽器を揃えて、ツアーに出ていない年に3か月の間住めるだけだけどマンションも買えるぐらいの現金が入る。キミの曲がラジオでかかるし、量販店でも売ってるし、あこがれのヒーローと同じステージにも立てる。夢の実現に近づいているけれど、目の下の隈はなかなか消えないよ。今までよりももっとよく働いて、レーベルや宣伝担当や売り上げ目標や曲作りの締め切りからの新しいプレッシャーとの戦いだ

ベンチャーキャピタルからの投資

ブレークが来た!まだほんの始まりだけど、やっとちゃんとしたオフィスを借りたり、キミよりちょっとだけ才能がある奴を雇ってコーディングを任せられるぐらいの現金が入る。今までよりももっとよく働いて、投資家にいい投資案件だったことを示さなくちゃ。そうすれば投資家はキミの前にもっと現金を積み上げてくれる。キミの名前はメディアにも書かれるようになるし、あこがれのヒーローといっしょにNerdConのステージに立てるけど、取締役会や投資家や、株主や、その他キミが思いつくあらゆる人たちからのプレッシャーとの戦いだ

全部うまく行くと

ロックのスーパースター

豪華な生活。大きな家。クルマは5台。好きにできる

テックのスーパースター

ギョーカイのドンだ。あちこちから講演に呼ばれる。本を書く。ビル・ゲイツとゴルフ

そして

引退してプロデューサーになる

いつか、ツアー続きの生活に体がついて行かなくなり、ほかのミュージシャンが成功するのを手助けする、ふかふかの生活を始める

引退して投資家になる

いつか、ストレスだらけの生活について行けなくなり、ほかの起業家が成功するのを手助けする、ふかふかの生活を始める

個人的に特に大事だなあと思うのは第1段階のチーム編成のときにきちんとやりたい製品のビジョンがあること(あるいは、バンドを組む前に、やりたいバンドのビジョンとかサウンドのイメージがあること)かしらん。コレなしではバンドのメンバー選びもあやういし、むりやりその先に進んでもまずうまく行かない。「バンドやりたい」ではなく「こういう音楽やりたいからバンド作りたい」ってことですね。
より一般化すると、自分が世間のほかの人たちに提供したい新しい価値が、きちんと、できるだけ具体的に決まっていること、ですかねえ。これがぶれなければ、一緒に働く仲間選びも、日々の運営も、世の中に提供したい価値に合致するかどうかをよりどころにしてまっすぐ進むことができると思います。会社も「三つ子の魂百まで」。
もひとつ言えば、べつにスーパースターになることを目指す必要すらないと思う。このアテンションエコノミーの世の中、お金をたくさん儲けることが絶対のゴールではないし(そりゃ、まだまだお金があったほうがいろんなことを仕掛けやすい世の中ではあるけれど)、自分と自分の会社が提供するほかにない新しい価値で世の中の一定の数の人たちをより幸せにできて、それで自分たちも食っていける仕組みが持続できるのであれば、会社の成長がちょうどいいサイズで止まってもぜんぜん問題ない。
みんながみんなビートルズのようになることをゴールにしなくても全然OKだけど、どんなサイズの「創業の想い」に対してもジョージ・マーティンのように熱心に接していきたいと思いを新たにしたのでした。

投稿者 樋口 理

「会社やろうぜ! [技術系事業を起業するのとバンドを始めるのはよく似てる]」に2件のコメントがあります
  1. 第2段階、いえ第1段階で力尽きるバンドが多い様に思いました。

  2. メンバーのソロ活動開始による離脱とか、バンドの解散とか、終わっていく様子も企業活動とアナロジーできるような気がします。人間社会なのであたりまえか?

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