今はどうだか知りませんが、私がソニーで働いていた頃、社内ではなにかにつけ“ソニーらしさ”ということが問われていました。
その新製品はソニーらしいかとか、はたまた、そういう考え方はソニーらしいかといったように、業務上なにかの判断が必要なときに、判断の基準の重要なファクターとしてこの“ソニーらしさ”が使われます。何をもって“ソニーらしい”と言うのかという定義があるわけではないのですが、ソニーの“ファミリー”の全員が目に見えない“ソニーらしさ”のイメージを共有するような空気がありました。
私にはそれが窮屈だったのですが、外から見るとこの“ソニーらしさ”が熱狂的なソニーファンをひきつけている見えない力のような気もします。


その頃のソニーの製品は、えてして作り手がこの“ソニーらしさ”を追求するあまり、作り手のお気に入りの“ソニーらしい”機能やデザインだけが一点豪華主義的にフィーチャーされて、全体のバランスの中で突出してしまうという、ある種 neoteny (幼形成熟)なところが感じられた気がします。手段のためには目的を選ばない、といったところでしょうか。
最近のソニー製品はそういうところがなくなって、よく言えば総合的バランスが取れている、あくがない、オトナの製品になっているように思えます。それを突き詰めて行くとQUALIAになるんでしょう。ちゃんと入るべきものが計算どおりに入っているけど、何か雑味が足りない、濃縮果汁還元の100%ジュースのような印象があります。
しかし、昨日、新橋の烏森神社の近くの魚が旨い居酒屋で耳にした、ソニーの新しいネットテレビ(って言うんですかね、テレビの形をしたインターネット家電)は、久しぶりにこの“ソニーらしさ”がぷんぷん匂う、“お馬鹿”(ほめ言葉ですよ)なものでした。
未発表の製品なので詳しいことは書きませんが、ネット家電のユーザーインターフェースをあれこれ考えた末、そのユーザーインターフェースを実装するために組み立てていたら大きなテレビができちゃった、というイメージ。キーワードは「タクト」あるいは「エアホッケー」(これじゃなんのことだか、わからないか……ま、来週には発表になるそうなので、待っててください)。
かなり高価なものなので、量販店でぽんぽん売られることも、衝動買いでつい思わずお持ち帰りしちゃうこともないだろうけど、ソニー製品はとにかく全部買ってみるのだという昔からのソニーファン(本当にそういう人たちがいらっしゃるんです)にはたまらないものになりそうな気がします。
私自身はソニーに対して何のノスタルジーも感じないのですが、そんな私でも、こういう“お馬鹿”なものを商品化までこぎつける“好き者”がまだソニーの中に健在で、それを許したマネージメントもいた、ということを知って、なんだかとてもうれしくなりました。担当者に熱烈な拍手。
「QUALIAこそがソニー」じゃないよね、やっぱり。

投稿者 樋口 理

「ソニーらしさ [変な新製品]」に16件のコメントがあります
  1. 「QUALIAってアレおい、ソニーなのか?」が身の周りで何度か話題になったもんですが、面白いお話をうかがうことができました。

  2. osamuさんはもちろん例外なんでしょうけど、ソニーの卒業生って「ソニーらしさ」にこだわり過ぎるのか、極めて保守的、万人受けって印象が強いですね。
    これも、osamuさんは例外なんでしょうけど、ソニーを卒業してしまってからはあまりパッしない人も多いですよね。
    やっぱ、「ソニーに対するノスタルジー」をいつまでも引きずってしまうでしょうか。
    私は烏森近くの「魚が旨い居酒屋」に限り無いノスタルジーを感じています。
    今の季節、大きめのアワビを注文して、半分は刺身、半分は塩焼き・・・たまりません。

  3. > osamuさんはもちろん例外なんでしょうけど
    っていうフレーズが、どうも素直に受け取れないですが(笑)、アワビは美味しかったです。旨みの詰まったほろ苦い肝がまた……

  4. 素直に受け取って下さい。
    それにしても、いい生活してますねえ。
    最近はアワビなんて見たこともありません。 肝かあ・・・あれも塩焼きが冷酒にぴったしですよね。
    東京に移住したくなりました。

  5. 一言わせてください。QUALIA!やっぱテレビだけはソニーでしょ。と思っている私は、パイオニアのPDPにそそられつつも、QUALIA、130万のブラウン管!発表の日に見に行ったですよ。すげー綺麗なんですよ。確かに。カラーバランスが絶妙で。もう写ってるネエチャンの口紅の色がもうもうもう。もう生身の女に何もかじなくなった私も、これには参った。これでニュースステーションをみたら、渡辺真理の白い腕が美しく見えることだろうよ、、と。ただですよ。今時ブラウン管のテレビが130万ですよ。なんでこんなに高いの?とそこにいたお姉さんに聞いたら、「職人が一日に2台しか作らないそうなんですよ」だって。漆工芸じゃないんだから。工業製品なんだから。ジャパネットタカタが売ったって、ソニーはソニーなんだから。安くていいもの作れよと。もう日本はダメなのかああああ。

  6. その「職人」(マイスターでしたっけ)がテレビに出てました。結構若い女の子でした。

  7. やはり今金使うなら、APPLEでしょう。とあまり理解されにくいこと言ってしまいますが、G5をフルスペックで買うことにしましたので、テレビは長年使っているプロフィールプロでしばらく我慢することにしました。
    最近、気が付いたのですが工芸が工業に進化したわけですよ。例えばイタリアとドイツ。前者は相変わらず工芸大国でアルファロメオみたいな小細工バリバリの車作ってるし。ドイツはアウディみたいに工業追求したら、デザインという出口に出ちゃいました。っていう車を作ってる。アップルもソニーも後者だと思っていたんだけど。ソニーはヤーバイね。QUALIAはチープ。いいのはブラウン管だけだった。それもおそらく、業務用ハイビジョン管の使い回し。それにデザインくっつけただけじゃんか~!!!だったら業務機を買うよ。とようやく目が覚めました。

  8. なるほど、なるほどね。
    工芸の枠組みでは工業品のまねをすると均質なものができない、工業の枠組みで工芸品のまねをするとチープになる、ってことでしょうか。

  9. まさしくそーです。老舗のこけし屋が大型旋盤で大量生産をやって一時は結構温泉街でよく売れた。でも最近は射的屋の景品ぐらいにしかならなくて、もう一度爺ちゃんのわざを息子が復活させようかと。そんなチープさを感じる今日このごろのソニーであります。

  10. 「ソニーらしさ」とは?

    Higuchi’s blog – ソニーらしさ [変な新製品]  元ソニーの方が、「ソニーらしさ」について語っています。過去のソニー製品は、作り手のお気に入りの機能やデザインが一点豪華主義的に盛り込まれ、全体のバランスを崩して突出していたのが「ソニーらしさ」だったのではないか

  11. 昨日、はじめてCMでQUALIA!を拝見したのですが(あんまりTVみないもので…)、それを見ていて思いだしました。
    私が幼少の頃(といっても高校生になったばかりの頃)ソニーのステレオを買った(買ってもらったに限りなく近いか?)のです。アンプもチューナーもプレイヤーもデッキもスピーカーもラックも全部予算と相談しながら一つ一つ選んでいったのですが、あの頃、絶対届かない高嶺の花にesplitというラインがありました。
    QUALIA!ってそんな感じなんですかねぇ?

  12. エスプリがあったころってことは、スピーカーは平面?(と、どうでもいいところに反応)
    ソニーに勤める頃、すでにオーディオとか興味を失ってたせいか、エスプリって、あまり印象に残ってないんです。
    そういえば、社販でエスプリのアンプ買って、独身寮に置いていた方がいたなあ。今は宮崎のほうでSOHOなテクニカルライティングをやってらっしゃいますが……

  13. ソニーのマスモニ(マスター・モニター)はけっこういいです。初期モデルには問題があったけど、安定してからは、解像度も高いしシバソクより個人的には好きでした。でも、QUALIAはどうかな?性能じゃなくて、デザインやコンセプトが。何だか、ソニーは良心を失いつつあるような気がする。SMS-2P RS(パワード・スピーカー)も生産完了になってしまったし。売れるものだけ残して、本当にいいものがだんだん無くなってきているように思うのは私だけでしょうか?

  14. 初めまして、ソニーのQUALIAにプロジェクターがありますが、接続端子が見えないことに、不満がありますね。なぜ見せないのでしょうか?
    まあ、値段的には、G90と比べれば安いでしょうけど、消費電力が・・・・・
    実のところ、ブルーレイを持っているので、ちょっとだけ気になります。
    130万?するテレビには、関心は有りません。

  15. プレステ、バイオが売れるようになってきた頃からsonyらしさが無くなってきましたね。昔のsony製品には独創性が感じられたし、商業的には?であっても独創的な技術を採用した製品が多く、孤高なところが素敵でした。デザインも業務用然とした機能美のある端正なものでした。最近はデザインのためのデザインで、ウケを狙い、流行に迎合したものになってしまい、明確な個性が無くなってしまいましたね。QUALIAも同様です。かつてのESPRITシリーズのようなストイックさ孤高さは感じられず、魅力を覚えません。

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