いつか書かなくてはと思っていたこと。
宣伝・広告と広報(あるいはパブリックリレーションズ=PR)って、まったく別のモノなんだけど、エライ人でも意外にこの2つを混同している人が多くて、話がかみ合わないことがよくあります。
違いを説明しようと思って、以前は「広告は掲載する媒体に対価を支払うけど、広報は払わない」とか、「広告は自分が作ったメッセージをそのまま伝えてもらうけど、広報は媒体が斟酌して載せる」とか、表面的な業務の仕組みの違いを一生懸命説明しながら、なにかもっと本質的でシンプルな説明がないものかと探していたんだけど、ある日コスモ・ピーアール社長の佐藤玖美さんから送られてきた献本の書名にその答がありました。
そのタイトルは『LOVE ME COMPANY! 愛される会社の条件―新しいCSRの考え方―バイ・ミー!からラブ・ミー!へ』。
つまり、宣伝・広告と広報とでは、伝えたいメッセージと、メッセージを伝える心がけが根本的に違うんですね。
- 宣伝・広告は「私(の会社の製品やサービス)を買って!」
- 広報は「私(の会社や製品・サービス)を愛して!」
という違い。うまいこと言うなあ。これって玖美さんのオリジナルなのかな。
さて、「宣伝・広告は Buy me で、広報は Love me です」という違いは、広報の担当者よりも、それ以外の人たちにしっかり覚えておいてもらいたいのです。前にも書いたけど、広報のプロは(Buy me と Love me という風に理解しているかどうかはさておいて) “Love me company” なメッセージを発し続けられるようにリリースの書き方とか、メディア対応のしかたとか、話し方とか、いろんなトレーニングを受けて実践しているからいいのだけれど、昨今問題なのは、ネットのおかげでメディアの「カタチ」が急速に変わっちゃったために、広報のトレーニングを受けていない「それ以外」の人たちの普段の行動や言動がパブリックに伝わるようになったということ。
人間、まだ世の中やギョーカイに慣れてなくて、名前も知られてなくて、自分のモノやサービスが売れてないうちは、誰でも自然と謙虚になって「まず、自分(と自分の会社と製品)を好きになってもらいたい」というキモチが働いて、そういう言動になるもの。ところが、なまじちょっと売れてきて「自分(の会社と製品)は好かれてる」と思い始めると傲慢になってきて、営業の現場でのお客さんや仕入れ先の人とのやりとりとか、会社の立場で書いた「企業ブログ」の記事とか、なめてかかった公聴会での不用意な発言(謎)とか、企業活動のあらゆるシーンで外から「なんだこいつ」と思われるような言動をしてしまうようになります。
特に時代の寵児みたいに言われてあっという間に売れちゃった会社は、そういう勘違い野郎が大量発生しがちですね。どことは言わないけれど、10年前はあそこがそうだったし、今はこっちの会社。
昔はそれでも、その勘違い野郎がその場限りの小さな不快感を生むだけだったんだけど、今はそれがあっという間に世間に広がって「祭り」になっちゃうから、全社のあらゆる人が、あらゆるステークホルダーに対して “Love me!” の姿勢を持ち続けないといけないのがこわいところ。
今の広報のお仕事って
- 社員があらゆるステークホルダーに正しい “Love me!” メッセージを発し続けるようにし向けること
- 社員がばらばらなメッセージを出さないようにコンダクターとして振る舞うこと
- 社員の言っている “Love me!” メッセージをすんなり受け入れてもらえるように、会社も同じポジションだということを「世間様」に伝え続けること
- その「世間様」に向き合うために、ネットを含めた広い意味でのメディアと向き合うこと
という、“Love me!” メッセージのサプライチェーン管理のお仕事なのではないかと、最近の世の中の祭りを見ながらますます思いました。
そうですね、こういった視点が欠けていると、(どこの会社とは言いませぬが) 「自分が言いたいことを言い放つ」だけの中身の薄いプレスリリースが増えるし、普段のメディアの方々との付き合いにおいて「聞かせてやろう」とか「ちょっと取材に来てよ」てな態度になっちまうわけですね。でもその視点と同じくらい大事なのは社内への働きかけというわけで、これまたご指摘のとおり。