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The means justifies the ends

コラボレーションの再定義だ [Google Wave]

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グーグルのプライベートイベント Google I/O 2009 で発表された Google Wave。生デモを見たかった(生にせまる臨場感があるわかりやすいレポートはこちら)。
グループウェアの新世代がやってきましたね。

昔話をします。

僕がグループウェアに興味を持ったのは1980年代の終わり頃、ソニーでワープロ専用機の設計とか企画とかをやっていたとき。Netnews とメールとFIleMaker を組み合わせて、なんとかしてお客様ご相談室へのお問い合わせと事業部側からのそれに対する回答を電子的に行って蓄積してあとから再利用できるようにできないだろうかと苦心した(結局挫折した)り、職場でその日のランチの仕出し弁当を注文する人のオーダーを机の上のコンピュータ(みんな黄色いイーサネットケーブルでつながった NEWS という UNIX ワークステーション や PC を持ってた)から出してもらって、それを自動的に集計してお弁当屋さんに FAX する仕組みができないかと夢想していた(これも頓挫した)とき。
コンピュータと通信を使って共働環境をつくる Groupware という考え方があって、学会もあるという話を USENET か何かで読んで調べ始めたのがきっかけでした。 そのころ学会で議論されていた Groupware って大きく2種類あった気がします。ひとつは遠隔地にある施設を映像や音声やコンピュータ画面でつないであたかも同じ場所にいるように作業できる「同期型=Synchronous」な共働環境の研究で、これは NEC とか日本の研究所の論文が多かった気がする。もうひとつはコンピュータネットワーク上で電子文書を蓄積したり共有したり送信したりする「非同期型=Asynchronous」な通信による知識共有の環境の研究。海外の研究はもっぱらこちら。

で、僕はその後、ミイラ取りがミイラになるように、カスタマーサポートの知識蓄積システムとかお弁当発注システムなんかを簡単に作れるというふれこみのグループウェア環境の商品化にかかわることになったわけですが、そのグループウェアは上の分類で言うと「非同期型」のほう。蓄積した文書情報を、非同期に通信して、引っ張り出したり送り出したりするしくみでした。

その後20年近くの間、「グループウェア」というと、知識創造環境から、ただのスケジュール調整・会議室予約システムまで、たいてい非同期通信をベースにしたものだったんだけど、昨日、ついに同期通信をベースにした協働環境のインフラが華々しくデビューしたわけです。

同期通信ベースだと、ネットワークの上の他の計算機や他の人の力をリアルタイムに借りながら、リアルタイムに知識と作業の共有ができるようになる。リアルタイム翻訳チャットのデモはそのわかりやすい例ですね。この環境の上で、今までの非同期通信ベースとはまったく違う次元の協働アプリケーションが、いろんな人の手でもりもり作られる可能性を持っているはず。

これはすごいことだと思いますよ。

コメント

こいちさんのコメント:

ぼくの考える正しいコラボレーション環境は非同期なものだったので、その環境がない今の会社では、共有すべきものはメールで送らずにどっかに入れとけコラ、っていうフラストレーションを日々感じておりました。リアルタイムなコラボレーションというものがチャットやデスクトップ共有にとどまっているうちはコラボレーションと言ったら非同期がまずあってリアルタイム系ツールはそれを補完するもの、っていう程度の感覚でいたのですが、そうですねえ Google Wave、「有機的に連携」ってこういう環境のためにある言葉なんだなと。リアルタイムの価値が何ステージか上がった感。(長文御免)
2009/5/30 10:45

ootaharaさんのコメント:

オンライン今日のお弁当発注システムは便利です。
しかも支払いは給料天引き。
2009/5/30 11:58

樋口 理さんのコメント:

その後、20世紀の世紀末も近くなった頃、日本のとあるソフトハウスが臆面もなく「グループウェア」という語の登録商標の権利を手に入れて(なんで、そんなのが商標登録できたのかは不明)各社に「うちの商標だからクレジット入れろ」と言ってきたという笑い話のようなエピソードもあったことを思い出しました。しかけた人が何を考えていたのかは不明だけど、商品カテゴリー名の商標を押さえたら市場を席巻できるとでも思ったのかしらん。

今は昔。
2009/5/30 13:53

たろさんのコメント:

非同期も連続すれば同期とあまりかわらなくなる、なーんてね(苦笑
2009/6/14 21:44

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